Q&A形式でチェックする「リサーチの種類・背景」 事例詳細|つなweB

リサーチの工程について話を進める前に、まずは、リサーチの基礎的な項目について、木浦さんに質問した内容をまとめてみました。まずは用語の意味やその背景などを確認してください。

 

木浦 幹雄さん
アンカーデザイン株式会社 代表取締役 兼 CEO /キヤノン株式会社にてカメラ、ロボット、ヘルスケアなどの新規事業/商品企画に従事したのちCopenhagen Institute of Interaction Designにてデザインを活用したイノベーション創出を学び、帰国後アンカーデザイン株式会社を設立。

 

Q1:リサーチはなぜ重要なのですか?

A プロダクトの課題を見つけたり、新規プロダクトとして何をつくるべきかを明らかにできるからです。

価値あるサービスやプロダクトをつくるためには、そのサービスのユーザーを正しく理解することが大切です。そのためには、サービスやプロダクトを利用しているユーザーが何を考え、どのような行動をとっているかを知ることが重要です。そうすることで、彼らがどんな課題を抱え、どのように解決されることを望んでいるかを理解し、意味のあるサービス・プロダクトを実現することができるのです。

 

Q2:いろいろなリサーチがありますが、どれを知るべき?

A UI構築に役立つという視点で考えるとUXリサーチやユーザビリティ評価が効果的だと考えられます。

「売れるUIの構築に役立つ」という視点で考えた場合に注目したいのが、最近話題に上ることの多い「UXリサーチ」でしょう。以前から行われてきた「ユーザビリティ評価」もUXリサーチの一環で実施されることが多く、既存のWebサイトやアプリの改善を図るために効果的です。

もう一つ、よく耳にする「マーケティングリサーチ」ですが、Webサイトやアプリなどの開発や改善といった視点ではあまり向いていないと言えそうです(その理由については次項で説明します)。

 

Q3:UXリサーチとはなんですか?

A 良いUX(ユーザー体験)をデザインするための調査のことです。

ちょっとわかりにくい言葉ですが、「良いUXをデザインするためのリサーチ」と捉えてみると、イメージがしやすいのではないかと思います(言葉の構造としては、マーケティングリサーチが、『マーケティングをするためのリサーチ』であるのと同じです)。良いUXをデザインすることが「売れるUI」をつくることにつながると考えれば、UXリサーチがいかに重要かがわかると思います。

UXリサーチはこれまで、UXデザインの工程のひとつとして実施されてきましたが、近年は、UXリサーチという言葉を使う機会が増えています。

 

Q4:プロダクトリサーチやデザインリサーチといった言葉も聞きますが…

A 言い方こそ異なりますが、基本的にはUXリサーチと同じものと考えることができるでしょう。

最近は「プロダクトリサーチ」や「デザインリサーチ」という言葉が使われることもありますが、それぞれの中身を見てみると、UXリサーチとほぼ同じものだと言えるかと思います。

ちなみに、Wantedlyなどを覗いてみると、自分の仕事のことを「UXリサーチャー」と表す人もいれば、「プロダクトリサーチャー」または「デザインリサーチャー」と表記される方もいらっしゃるようです。本記事ではUXリサーチと表記していますが、将来的にいずれかに言い方が統一されていくかもしれません。

 

Q5:日本でUXリサーチが行われるようになったのはいつ頃からですか?

A 話題になる機会が増えたのは2017~18年ごろからでしょうか。

日本で「UXリサーチ」という言葉を耳にするようになったのは、5年ほど前からではないかと思います。アメリカのスタートアップ企業などでUXリサーチが広く行われていることに影響を受ける形で、日本でもUXリサーチが実施されるようになり、一般にも認識されるようになりました。

近年は、これまで「UXデザイナー」を名乗っていたものの、実際にはリサーチ部分を主に担当していた方々が、UXリサーチという言葉を使い、UXリサーチャーを名乗り始めています。

 

Text: 小泉森弥
Web Designing 2023年4月号(2023年2月17日発売)掲載記事を転載