アドレスホッパーで移動生活!地域を去っても各所と関係性を継続 事例詳細|つなweB

アドレスホッパーという生き方で気づいた地域暮らしの魅力

二拠点生活のような拠点を複数持つ発想もありますが、最近では、拠点自体持たず、移動して生活を営む「アドレスホッパー」というスタイルも登場しています。ここで紹介する木津歩さんも、アドレスホッパーとして、2018年4月から現在に至るまで、10カ所以上の地域を渡り歩いている方です。

「設計事務所を退職したことで定期収入がなくなり、住んでいた東京のシェアハウスを退去することになりました。それをSNSで知った石川・能登の友人が『1ヵ月くらいなら食費込み3万円で住んでいいよ』といってくれて移り住んだのが始まりです。能登には1カ月半ほど滞在しました。その後、また別の友人が夏季限定のアルバイトを募集していると聞きつけ、札幌に向かいました」

もともとは、強い動機があって移動生活を始めたわけではないものの、各地域の友人から声をかけてもらったり、自身から住み込みのアルバイトに応募するなどして、地域を渡り歩くうちに、アドレスホッパーという生活と、地域暮らしの魅力に気づいたそうです。

「今の生活スタイルでは、いろいろな人との新しい出会いがあったり、考えたこともないようなことを考えることがあります。いい意味でも悪い意味でも毎日が新しく、飽きがきません」

 

地域と関係性を継続させる仕組みを構築

木津さんは、地域暮らしを続ける中で、関係人口という概念にも関心を持つようになったとのこと。

「能登にいた間、友人たちが東京から遊びにきてくれました。友人は自分がフックになって、この地域に訪れてくれている。そうした点で、自分が地域の関係人口になっている感覚を持ちました」

ただ、一方で、関係人口という言葉の持つ曖昧さに対し、懐疑的な気持ちも抱いていたといいます。

「滞在期間は地域と密に接していても、去ってしまえば関係人口ではなくなってしまうのだろうか。そこに問いを立てる取り組みをしたいと感じていました」

その意識は、兵庫県香美町のまちづくりを担うNPO法人「TUKULU」との間で結ばれた「関係人口契約」の実現につながります。木津さんは、TUKULUから契約料をもらう代わりに、?月1回以上オンラインMTGを実施して、情報共有・関係性維持を図る?地域活性化に向けたイベントなどの企画立案を支援する?自身のブログにTUKULUのバナー広告を貼る、という3つの約束をしているそうです。

「今のような生活を続けていくためには、各地で継続的な仕事をつくる必要があります。そうした現状や関係人口に対する想いを、東京のシェアハウスで知り合ったTUKULU理事長の松岡大悟さんと香美町滞在時に話し合い、この契約が実現しました。最初は探り探りでしたが、今では、東京で開催する移住フェアの手伝いもしています。地域との関係性を継続させる仕組みづくりは香美町以外ともやっていきたいです」

最後に、現在の生活スタイルを続けるためのポイントを聞いてみました。

「関係人口契約や短期バイトで収入を得ていますが、正直なところ生活費はカツカツです(笑)。それでも生活できているのは、滞在場所の紹介などをしてくれる友人・知人のおかげ。SNSでの発信も続けつつ、各地で出会った人との関係性を継続させていくことも、とても大事にしています」

アドレスホッパーとしての移動生活
アドレスホッパーは、住所を意味する「address」と、飛び回る人を意味する「hopper」を組み合わせた造語。木津さんは2018年4月から、「石川・能登」「北海道・札幌」「兵庫・香美」「大阪全域」「青森・十和田」「岡山」「北海道・下川」「富山全域」「岩手・陸前高田」「岩手・遠野」「兵庫・香美(2回目)」「千葉・金谷」「沖縄・国頭」という順で、各地でバイトなどをしながら移動生活を実践してきた。写真は、兵庫県香美町でイベント用の撮影をしている様子(左上)、岡山県岡山市の酒屋「藤田酒店」で働いている様子(左下)、岩手県陸前高田市でワカメ漁を手伝っている様子(右)
関係人口契約の考え方
関係人口には、移住よりもハードルが低いという特徴がある。関係人口契約は、地域にとっては「より間口を広げる形で、他地域の人を確実に地域づくりに取り込める」、個人にとっては「興味のある複数の自治体と継続的な関係性を築ける」仕組みだ
編集部
※Web Designing 2019年10月号(2019年8月17日発売)掲載記事を転載

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