【AIとサービス】HireVueー予測分析で採用を効率化 事例詳細|つなweB

近年増え続ける動画面接システムの採用

人材不足が加速する今、多くの企業にとって、人材確保は喫緊の課題。と、

同時に新卒、中途問わず、採用にかかるコストは企業にとって大きな負担になっています。

そうしたなか、注目を集めているのが動画面接システム。企業側が用意した質問に応募者が動画で回答。録画した動画を採用側がチェックするという形式で、もちろん録画ではなく、通常のビデオ会議のように、ライブ形式で面接を行うことも可能です。

こうした動画面接システムは国内のサービスもいくつか登場していますが、現在、IBMやApple、JTBやリコージャパンなど、国内外の大手企業を中心に採用されているのが、「HireVue」です。HireVueでは、前述したような録画・ライブ面接システムの利用にくわえて、オプションでAIを活用した「HireVue Assessments」と呼ばれる人工知能選考支援機能を搭載しているのが特徴。AIが、応募者の「活躍予測」を判定してくれるのです。

 

AIが「活動予測」スコアを表示

HireVueのAIはどのように構築されているのでしょうか? 同サービスを利用するには、次の2つのデータが必要になります。

(1)優秀な人材の動画面接データ
(2)入社後のパフォーマンス指標

(1)はHireVueで録画した過去の応募者の動画面接データのうち、企業が優秀と判断した人の面接動画データ。(2)は優秀者500人の入社後のパフォーマンスの実績。このデータをもとに、HireVueのデータサイエンティスト、IOサイコロジスト(産業・組織心理学者)、エンジニアで構成されたチームが、導入企業や導入企業の職種ごとにAIを構築。面接者の動画を「言葉(専門職なら、専門用語がでてくるかなど)」「音声(話し方、抑揚など)」「表情」から分析し、構築したAIが「活躍予測」を判定します。また、AI構築の際には、HireVueがこれまで蓄積したビッグデータを利用することも可能です。これらによって書類からは得られない多くの情報を利用した採用が可能になると、HireVueを日本で展開するタレンタ株式会社の中村究さんは言います。

「履歴書やエントリーシートでは、400~1,000字程度で判断しなければいけませんが、動画から得られるデータポイントは約100万ポイント。そこから、HireVue Assessmentsでは『言葉、音声、表情』など、差異を抽出しやすい2万5,000ポイント以上を活用して、活動予測を表示します」(01)

 

採用にかかる時間が大幅短縮

HireVueのAI機能は国内では今年6月から販売開始されたばかりということもあり、まだ導入事例はありませんが、海外ではヒルトン・ホテルやボーダフォン、ユニリーバなどがすでに導入。こうしたAI導入によるメリットは、大きく2つあります。

1つは、採用期間の短縮です(02)。HireVue Assessmentsをすでに導入しているグローバル企業では、AI導入前と比較して、最終面接人数が約40%~70%減、選考期間が約50%~約90%も削減されるなど、採用フローが劇的に効率化されました。企業によっては、エントリー後は、AIを活用した動画面接を行い、残るは人間による最終面接のみというケースもあるほど。また、面接候補者のスクリーニング(ふるいわけ)にAIを導入した場合、「活躍予測度」の高い人から会っていくことで、早い段階で募集定員を満たせるようになる可能性もあります。

もうひとつのメリットは、面接担当者の主観や好みが排除される点です。AI支援を導入した1年目~2年目は、AIと採用担当者の両方が面接候補者をチェックし、AI選考のズレを修正する必要がありますが、チューニング後は、一定の基準が適用されることになります。こうしたAIの選考が効果を発揮しやすいのは、求める人物像がはっきりしている場合と中村さんは言います。

「AI支援は、たとえばホテル業界やキャビンアテンダントなど、求める人物像や避けたい人物像のイメージがはっきりしていると、特に効果を発揮しやすいのが特長です。」

 

導入にはコスト面でのハードル

また、AI活用に限ったことではありませんが、こうした動画面接は採用以外にも利用可能です。実際、HireVue導入企業では、「こういうトラブルが発生したときに、どう対処するか」といった設問を用意して、それを動画で回答させ、社内トレーニングシステムとして活用したり、プロジェクトリーダーに相応しいかなどチームビルディングの構築に役立てているケースもあります。

ただし、HireVueのAI活用にはハードルもあります。まずは導入側が500人以上のデータを用意しなければいけないため、毎年ある程度の規模で採用していなければ、そもそも導入が難しい点。そしてHireVueの導入費用に加えてAI支援費用はさらにプラスアルファの費用が必要です。しかし、それだけのコストをかけても、採用の負担が減るのは大きなメリット。AIによる選考が当たり前になる日も、遠くないのかもしれません。

 

 

奥田高広
※Web Designing 2018年10月号(2018年8月18日)掲載記事を転載

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