【AIとサービス】VAAKEYEー行動解析・予測で万引き防止 事例詳細|つなweB

AIで万引きを防止

スーパーで商品を手に取ったり、戻したり。A地点からB地点に移動して、またA地点へ移動する・・・。人の行動の大部分には、意味や心理が現れているもの。こうした人の行動を解析し、小売店を悩ます万引きの防止や新たなマーケティングの導入、駅や空港など、公共性の高い場所での不審人物のチェックなど、さまざまなソリューションにつなげようとしているサービスがあります。

AIの研究で知られる東京大学の松尾研究室とソフトバンクによるVCの支援を受け、人の行動解析にフォーカスしたサービスを提供しているのが、昨年11月に設立された株式会社VAAK。同社が現在、実験的に提供している予測型警備支援サービス「VAAKEYE」は、小売店を悩ます万引き防止を目的としたソリューション。現在、実店舗でのテストを実施し、10月の正式ローンチを目指しています。

VAAKEYEの仕組みは、店舗に備えられた防犯カメラの動画を、クラウド上のソフトが解析。行動を解析して、対象人物の動きから、「不審度」を表示します。万引きの決定的瞬間を検知するのはもちろん、万引き発生前から「不審度の高い」人物に対して注意を払うことで、万引きを抑制できるようになっています(01)。VAAKの代表、田中遼さんは、VAAKEYEのAIについて次のように説明します。

「VAAKEYEでは、動きの検知、行動解析、行動予測のすべてに、それぞれ異なる自社開発のAIを活用しています。一般的な行動解析はどこを向いているか、どういう行動をとってきたかの導線などのデータしか取得していませんでしたが、VAAKEYEでは対象人物の服装、表情、持ち物、滞在時間、動きなど100ポイント以上を解析して、行動の意味を判断できるようにしているのが大きな強みです」

 

異常心理学をベースにしたAI

 現在、万引き対策としてVAAKEYEで活用されているAIは、歩数が多い、キョロキョロしているといった「心理学的側面から見た行動」と、万引き警備の専門家などのノウハウをアルゴリズムに落とし込み、開発されたもの。このAIが動画をリアルタイムで解析し、店内にいる人物の不審度として表示します(02)。

さらにVAAKEYEでは、AIに天候や地域などの統計情報を組み合わせ、万引き犯が現れやすい時間なども予測。万引き対策に人手を割けない店舗も多いため、「明日の14時30分に万引き犯が●%の確率で現れる」などと予測することで、警戒を促してくれます。

「店内が混みやすい時間帯など、万引きは実はパターン化しやすい。そこで万引き犯が現れやすい時間などを予測しています。加えて、AIは実際の防犯カメラ画像による学習も行っています」

 

行動解析をマーケティングに活用

VAAKEYEは導入コストの安さも魅力。費用は1店舗あたり、月額4万円~5万円。新たに専用のカメラを設置したり、万引き対策のために人を雇うことを考えれば、この価格は大幅なコストダウンにつながるでしょう。この低価格はAIを防犯カメラに組み込むのではなく、クラウド上のソフトで動画をリアルタイムで検知・予測していくことで実現しています。

現在は万引き対策に悩む小売り業からの問い合わせが多いというVAAKEYE。しかし、VAAKEYEの行動解析をマーケティングに活用することも可能です(03)。

「例えば、来店したお客様の目的を『買い物』『待ち合わせ』『トイレ利用』などと判別することもできますし、2つの商品で迷っていて、一度、商品を手に取ったが戻したなど、購買行動に関するログをとることも可能です。こうしたデータを活かすことで、例えば商品選びに迷っているお客様にプッシュ通知でレコメンドをおこなったりなど、新しいマーケティングに活用することもできるでしょう」

 

ソリューションごとにAIを構築

その他に、VAAKEYEの行動解析は、応用することでさまざまな課題解決にも役立てられそうです。

例えばケンカや刃物所持といった危険行動を解析し、犯罪を未然に防いだり、道路や線路付近の人を解析して、事故の防止につなげたり、従業員行動を解析し、生産性向上に役立てることもできるでしょう。また、工事現場での危険検知、介護現場での徘徊防止や発作検知などにも活用できる可能性もあると田中さん。同社が行動解析というコア技術をさまざまなソリューションに提供できるのには、理由があります。

「大手企業などが開発するAIは、さまざまな場面で使えるように、汎用性の高いものになりがちです。でも実際は行動解析をひとつのAI、アルゴリズムで解析するには無理がありますし、精度も低くなってしまいます。私たちは、『万引き防止』『購買行動』など、それぞれのソリューション毎にAIを構築するため、かなりの精度を発揮することができます」

さらに同社では、行動解析を用いて、レジなし決済のソリューションも開発中。これは入店時にスマホをかざせば、あとはどの商品を店外に持って行ったのかをAIが解析。自動で決済が行われるというもの。現在は万引き防止に活用されているVAAKのAIですが、このような行動解析サービスをカスタマイズすることで、自社の課題が解決できるようになるかもしれません。

 

 

奥田高大
※Web Designing 2018年10月号(2018年8月18日)掲載記事を転載

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