[Webと技術]ツールの使い分けとこだわり 事例詳細|つなweB

さまざまな方々に、それぞれの立場から綴ってもらうこのコラム。ひとつの「お題」をもとに書き下ろされた文章からは、日々の仕事だけでなく、その人柄までもが垣間見えてきます。

 

Webデザインの業界にいると、日々さまざまなツールの話題が行き交います。最近だとAdobe社がFigma社を買収した話が話題になりました。

私も現在はデザイン系のコミュニティを運営しているのでもちろんこの手の話題には敏感にならざるを得ないものの、自分の手でUIデザインをする機会も減ってきているので割と傍観している立場です。とはいえスタンスは今も昔も変わらずで、ツールに関してそれぞれ良し悪しがあり、状況によって使い分けたり、特に制限がないならば手馴染みの良いものを選べるのが良いんじゃないのかなと思っています。

このコラムでも何かと取り上げがちですが、最近はノーコードツールもたくさん出てきており、Webのクリエイターとしては実装手段がより増してきました。最近ではSTUDIOやWixなどのデザインを専門で手掛けているフリーランスの方なども見受けられます。実はつい最近も自分のプロジェクト関連で簡単なWebサイトを構築する機会が出てきたのですが、それもSTUDIOで実装することが決まりました。

サイト自体は既存のサービスと同じくサーバ上で構築してしまってもよかったのだったのですが、そのプロジェクトではフリーランスや副業の方も携わります。既存の開発環境にそれらの方々を招待するよりも、切り離してSTUDIOで管理した方が運用しやすいとのことで、なるほど、そういったコラボレーション観点からするとそういう選択になるよな、と納得しました。Figmaなどまさにそうですが、働き方によっても選ぶツールは変わるものなのだと、改めて実感しました。

最近私が企画から実装までを担当したメディアがあるのですが、こちらもWebflowやSTUDIOなどのノーコードプラットフォーム上で運用するのか、パフォーマンス重視でヘッドレスCMSを採用するかなど、とても悩みました。しばらくこの手の開発から離れていたので、改めていろいろと勉強して検討した結果、WordPressを採用しました。多くの外部ライターさんがログインして編集することを考えると、やはりWordPressの使い勝手が一番良かったのがその理由です。自身の体験からもWordPressは重くなりがちなのですが、新しいメディアの場合、使っていくうちにほしい機能も変わっていくので、ある程度対応できるWordPressの方がコンテンツサイドからすると、ありがたいんですよね、などと、それっぽい理由を綴ってみたのですが、実はWordPressを採用したもう一つの理由は単純に手馴染みが良かったからなんですよね。

この業界で働く以上、常に最新のツールや技術スタックを知るべきだし、活用すべきだという気持ちがどこかにあって、手馴染みの良いものを使うことはあまり成長がないようにも感じていました。けれども今回、いざつくり出したら、余計なことを考えずにつくりたいものと向き合え、制作に没頭することが出来たんです。最近はノーコードツールを触る機会の方が多くて、あまりマークアップもやっていなかったのですが、久しぶりに触れると楽しくて寝食を忘れてしまいます。自分にとってはコードをガシガシ書いて、デザインが出来ていく作業が何よりも楽しいということを思い出しました。

このご時世、クリエイターにとっていろいろなツールを使い分けられるのが大事なことだと思っていますが、同時に単純な効率や合理性だけではなく、その人にとってテンションの上がるツールや手段を選ぶのも大事ではないかなと思った出来事でした。そういったお気に入りの道具や手段を日々収集することがクリエイターとして長く楽しく生きていく秘訣なのかもしれません。

 

Midjourneyで「Autumn night, beautiful moon, quiet hill」というワードを入力して自動生成された画像。たった60秒で4枚のパターンをつくってくれます。

 

ナビゲーター:三瓶亮
株式会社フライング・ペンギンズ
プロデューサー、コンテンツストラテジスト

 

Text:三瓶亮
※Web Designing 2022年12月号(2022年10月18日発売)掲載記事を転載