[Webと技術] “苦手領域のサポート役”としてのAI 事例詳細|つなweB

さまざまな方々に、それぞれの立場から綴ってもらうこのコラム。ひとつの「お題」をもとに書き下ろされた文章からは、日々の仕事だけでなく、その人柄までもが垣間見えてきます。

 

今回のテーマは「Webと技術」。ちょうどこの秋でWeb業界に携わるようになって丸4年が経過しましたが、今年は特に技術の進歩に衝撃を受けることも多かったように感じます。ここでは、AI画像生成ツールについて、私自身が感じたことを書いてみようかなと思います。

話題になっているAI画像生成ツール「Midjourney」と「Stable Diffusion」は、どちらもテキストの説明文(※現在は英語対応のみ)を入力することで画像を自動生成するAIプログラムで、私は前者を試しました。表現したいものに忠実なテキスト(粒度の細かい指示)を入力すれば、画像としては十分使用できるレベルなのではないか、というのが率直な感想です。今後AIの学習効果によって精度もさらに上がっていくと思うので、Webサイトの一部の画像素材を画像生成ツールで補ったり、もしかすると、つくり込みが必要なキービジュアルの生成まで補えてしまう未来がそう遠くないところまで来ているかもしれません。

となると、懸念されるのが「クリエイターの仕事がいずれAIに置き換わってしまう」という点ではないでしょうか。ビジネス誌などでも、数年前からたびたび「AIに奪われる仕事ランキング」のようなものが特集されているのも周知の事実ですよね。AI技術の発展によって、非クリエイターでも、それなりのクオリティの成果物がつくれるようになれば、わざわざプロに依頼しなくてもよいと考える方も増えると思います。

私自身は案外この懸念点をポジティブに捉えています。というのも、AI技術は、自分の苦手なテイストや、つくることが難しいデザインのサポート役であり、「手段」の一つとして存在すると考えているからです。私は美大卒でもなく、別業界からデザイナー職へのキャリアチェンジをしていますが、そもそも自分の頭の中に「美大進学」の選択肢も「新卒でデザイン(クリエイティブ)職への就職」の選択肢がなかったのも、すべては「絵を描くのが苦手だったから」でした(笑)。最近はネット社会なので、絵が描けなくてもデザイナーになることはできる、という情報を簡単に得ることができますが(もちろんデザイナーは絵が描けるに越したことはないです)、その当時は今ほどSNSも普及していなかったので、そうした情報もあまり得ることができませんでした。

話を戻すと、私のように苦手な分野が存在するデザイナーにとっては、その苦手を補完する役割をAIが担ってくれる可能性があると考えています。今回話題になったのは画像を自動生成するツールですが、Webデザインやアプリのプロトタイプなどを自動生成してくれるAIも出てきています。

ツール自体にも賛否両論があり、また、権利関係の問題もグレーな部分があるため、すべての仕事がすぐにAIに置き換わるとは考えづらいですが、徐々にAIに置き換わる工程も出てくると思います。その際、新しいツールを活用する観点に加え、AIには代替不能な自分の価値を常に考え続け、価値を提供し続けられるデザイナーでありたい、と改めて気が引き締まりました。ある意味、生存戦略の一環として、AIの存在は私たちのお尻を叩くような存在なのかもしれません。

新しい技術に対して悲観的になるのではなく、うまく付き合っていきながら、生身の人間である自分が提供できる技術も磨き続けていきたいと思います。

 

Midjourneyで「Autumn night, beautiful moon, quiet hill」というワードを入力して自動生成された画像。たった60秒で4枚のパターンをつくってくれます。

 

ナビゲーター:小島香澄
株式会社KOS デザイナー。ハウスメーカーに新卒入社、資料のデザインが褒められたのをきっかけに、デザイナーとしてWeb制作会社に転職。日々の学習記録をSNSで発信していると、“モテクリエイター”として活動するゆうこす(菅本裕子)の目に留まり、2019年より現職。ゆうこすの手がけるサービスやプロダクトのデザイン全般を担当。 Twitter:@_mi_su_ka_

 

Text:小島香澄
※Web Designing 2022年12月号(2022年10月18日発売)掲載記事を転載