商品・サービスを説明する際に頻出! デリケートな「並列」の扱いに注意せよ 事例詳細|つなweB

商品やサービスの特徴はなるべく多く伝えたいもの

本誌・岡編集長の魅力は、エレガントさとユニークさです。先日、下町の串揚げ屋で初めて会食をしたわけですが、私はそう思いました。ちなみにその串揚げ屋のいいところは、クラシカルな店舗内装と工夫を凝らした数々の料理でした。

さて、我々が文書を書く際、このように「ひとつの商品・サービス」に対し、複数の特徴をあげることが多いです。「何か一つに絞る」。それほど強烈なアイデンティティがあればいいですが、なかなかそうはいきません。話題の「iPhone 14 Proシリーズ」にしても、「Dynamic Islandを搭載した新しいディスプレイ」「常時表示ディスプレイに対応」「48MPのメインカメラ」「暗所での撮影性能が向上」「シネマティックモードが24fpsの4K HDR撮影に対応」など、特徴のてんこ盛り状態。ユーザーの嗜好性が多様化する現代、「刺さりうるメッセージ」を多く用意することは、必要不可欠といえるでしょう。

そこで肝になるのは「並列」表現です。

「並列」とは、「この定期配送サービスの食品は、とてもリーズナブルなうえ、無添加で安全です」というように、複数の情報を並べること。商品を紹介するプレスリリースやWebサイトにある文章において、頻出する手法といえます。しかし、「並列」を用いた文章は必然的に長くなるため、正しく使えていない場合、その文章は極めてわかりにくくなります。逆に、すっきり読みやすい並列表現ができれば、1文できっちりと複数のメリットを訴求することができるというわけです。

限られた紙幅で最大限の情報を伝える作業は、どんなビジネスシーンでも求められること。そのためには、「並列」を巧く使いこなす必要があります。難しいことはありません。意識すべきは、「統一」。ですが、世の中にはその統一を無視した「並列」が、極めて多く存在しているのです。

 

「並列」をわかりやすくするルールはたったの4つ

統一のルールは難しくありません。①並列語の一方が体言(名詞・代名詞)であれば、他方も体言に。②並列語の一方が用言(動詞・形容詞・形容動詞)であれば、他方も用言に。③並列関係にある複数の述語に対する主語をそろえる。④並列扱いされる言葉の修飾量を整える。これだけの話です。ただ、これらは、文章を書く際に意識していない限り、容易に崩れます。私が雑誌の編集長をしている時代、もっとも多く赤字を入れたのが、この「並列」表現なのです。まずは①②について、例文で見ていきましょう。

【悪い例】この上半期のスマートフォン市場は、ストレージの大容量化と、映像の機能を強化した製品が人気を集めた。

どうでしょうか。意味は、わかるでしょう。しかし、なんでしょう、この気持ち悪さ。その正体が「並列の不統一」です。「ストレージの大容量化」という体言と、「映像の機能を強化した」という用言を並べているのが、NGな理由なのです。

【良い例】(用言で統一)/この上半期のスマートフォン市場は、ストレージを大容量とし、また映像の機能を強化した製品が人気を集めた。

【良い例】(体現で統一)/この上半期のスマートフォン市場は、大容量のストレージと高品質な映像機能を備えた製品が人気を集めた。

グッと読みやすくなったと思います。続いて③について、悪文から。

【悪い例】このテレビは、スポーツ中継の臨場感があり、映画では台詞や歌もはっきり聞こえました。

「臨場感がある」のはテレビです。しかし後者、「はっきり聞こえた」のは視聴者です。すなわち、主体が切り替わってしまっているのです。

【良い例】(主体がテレビ)/このテレビは、スポーツ中継の臨場感があり、映画では台詞や歌がはっきり再現されていました。

【良い例】(主体が視聴者)/このテレビは、スポーツ中継では臨場感を味わえ、映画では台詞や歌をはっきり聴くことができました。

別に、悪い例でもわかります。でも、このあと一歩のわかりやすさを文章で追求することが、商品やサービスの「品質」や「ブランド」を高めるのです。

④は、悪い例だけ。【悪い例】ユーモア、編集力、リーダーシップ、都内の高層マンション上層階に住み毎晩ワインを嗜むほどの経済力など、岡編集長の魅力は無限大だ。

内容は想像ですが、どうにもアンバランスですよね。「経済力」に長い形容を付けるのならば、ユーモアほか、その他の特徴にも同じ分量の形容を付けるべきなのです。

 

野球とサッカーは、違うスポーツですから、大谷翔平と三浦知良の成績を比べても意味がありません。でも、「年収」なら比べられますよね。要は「比べられるように条件を揃える」ことが大切なのです。同じ岡編集長を比べるにしても、トンマナを揃えないと比較になりません。

 

「並列」表現の作り方

「並べて比べる」以上、表現は同じ条件にすべし
「並列」の基本は、「並べるモノ」を同じ形にしましょう、というシンプルなもの。文章構造がシンプルなうちはほぼ間違えませんが、文章が長くなるにつれ、「体現と用言」の混在などが発生しがちです。「並列」自体、複数の事象を扱うわけですから、文章が冗長になるのは覚悟の上。しっかり体裁を揃え、わかりやすさを追求しましょう。

 

「文章の改善のために、並列の理解向上や表現力を高めてください」。ねじれているでしょう? このような「体裁の不統一」はよくある問題です。「文章の改善のために、並列の理解向上や表現力の強化を目指してください」。そう、比べる者同士、体裁を揃えることが重要です

 

まついけんすけ
株式会社ワン・パブリッシング取締役兼メディアビジネス本部長。20年間雑誌(コンテンツ)制作に従事。現在はメディア運営のマネジメントをしながら、コンテンツの多角的な活用を実践中。自社のメディアのみならず、企業のメディア運営や広告のコピーライティングなども手掛ける。ウェブサイトのディレクション業務経験も豊富。

 

Text:まついけんすけ  Illustration:村林タカノブ
※Web Designing 2022年12月号(2022年10月18日発売)掲載記事を転載