「1stパーティデータ」をいかに活用できるかがデータ取得のポイントに 事例詳細|つなweB

クッキーレスによってターゲティングの精度が落ち、リターゲティング広告が利用できなくなることで、Webマーケティング戦略やサイト制作に見直しが求められるようになります。では、どんな点に手をつけなければいけないのでしょうか。

 

1stパーティデータに注目を

3rdパーティクッキーが利用できたこれまでは、ユーザーのターゲティングを外部の広告ネットワーク会社の施策に委ねておくこともできましたが、これからのクッキーレス時代には、顧客をきちんと自社で管理することが求められるようになるとお話しました。

そこでキーワードになるのが「1stパーティデータ」です。1stパーティデータとは、自社サイトで収集したユーザー情報のことを示す言葉で、1stパーティクッキーなどの行動情報に加え、ユーザー登録の際に入力してもらったメールアドレスや電話番号、住所といった情報が含まれます。こうしたデータをしっかりと取得できれば、自社の顧客一人ひとりに対して、適切なアプローチが可能となるのです。

1stパーティデータを重視すべき理由は、クッキーレス以外にもあります。例えばコロナ禍で採用が進んだBOPIS※1 のような、いわゆるオムニチャネル戦略を効果的に進めていく際には、リアルとデジタル、さらにはPCとスマホなどチャネルをまたぐことになりますが、その際には顧客のデータがバラバラにならぬよう、適切な管理が必要となります。こうした背景からも1stパーティデータの収集と活用がいかに重要かがわかっていただけるかと思います。

※1 BOPIS(ボピス)とは
「Buy Online Pick-up In Store」の頭文字をとった略語。ECサイトで購入した商品を実店舗で受け取るサービスのことを言います。ユーザー側には店舗に滞在する時間が少なくて済み、店側には来店を促せるというメリットがあります。

 

データ取得と個人情報の保護

では、1stパーティデータはどう収集していけばいいのでしょうか。その答えは、Webマーケティングの基本とも言える「自社サイトの中をしっかりと回遊してもらう」ということに尽きるでしょう。ユーザーの興味を明らかにするためのコンテンツを系統立てて用意しておき、その人がどのコンテンツを見たかによって、どんな興味を持っているかを探っていこうというわけです。

ただし、データの取得に際しては、個人情報保護の視点が重要になります。ここまで説明したとおり、クッキーレスが進んでも、自社サイトを訪れた人に対するデータ収集が規制されるわけではないのですが2022年4月の改正個人情報保護法の施行※2 を控え、個人を特定するデータの取り扱いについては十分な注意が必要となるからです。では、個人を特定することなく、マーケティングに利用するためのデータを収集することなどできるのでしょうか。

※2 改正個人情報保護法の施行
2022年4月に施行される改正個人情報保護法では、コンプライアンス違反に対する罰則の強化が行われ、特にデータ漏えいなどを起こした法人に対しては非常に厳しい罰則・罰金が設定されています。

 

データ収集方法の発想を変えよう

そこで参考にしたいのが、「パーソナライゼーション 2.0」という考え方です※3。近年、マーケティング分野でしばしば使われるパーソナライゼーションとは、多種多様な顧客に対し、一人ひとりに最適化した体験を提供していくことを言います。

その際に、どんなデータを重視するか。これまでは主にその人の「属性」に焦点を当ててきたのですが、これを改め、その人の「興味や行動」に注目しようというのが、パーソナライゼーション 2.0※3 の考え方になります。次項ではこの点を具体的に見ていきたいと思います。

なお、コンテンツサイト用やキャンペーンサイト用として、複数のサブドメインを運用している場合、今後1stパーティデータの運用が困難になることが予想されます。お互いに認証しあうことで同一ドメイン下にあるように扱うことができなくなるからです。1stパーティデータの活用を最大限に行うには、ドメインの統合も検討すべき課題となるでしょう。

※3 パーソナライゼーション2.0
イギリスのマーケティング企業、イーコンサルタンシー社の創設者であるアシュリー・フリードレインが提唱したもの。ユーザーのプライバシーを犠牲にせず、機械学習で予測したデータを活用してコンテクストに応じたリアルタイム性をもったサービス提供を行うといった特色があります。

 

Webサイトはもちろん戦略の練り直しも必要となる
キーワードは「パーソナライゼーション2.0」

 

パーソナライゼーション1.0と2.0の違い

これまでデータの活用には、詳細な属性情報が欠かせないと考えられてきました。しかし、ターゲティングをする際に、詳しい属性データは本当に必要でしょうか? パーソナライゼーション2.0では、属性よりも興味や行動にフォーカスします。

 

Text: 小泉森弥