スコープ・計画・管理の三大要素で固めるプロジェクトマネジメント 事例詳細|つなweB

プロジェクトを巡り納期に追われ、クライアントと意見が合わずに悩んでいませんか? ナショナルクライアントなど数々の企業のプロジェクトマネジメント(以下PM)を手がける(株)JQに、PMに関する大切な5つの要素を中心に話をうかがいました。

 

教えてくれたのは…下田 幸祐さん
株式会社JQ 代表取締役社長 https://www.j-q.co.jp/
教えてくれたのは…小原 和典さん
株式会社JQ プロジェクトマネジメント事業部 執行役員

 

管理だけではダメ事前の準備が大切!

言葉の響きに惑わされるから管理先行で「準備」がおろそかに

私たちJQは、15年もの間、プロジェクトマネージメント(PM)を事業の中枢に据えてきました。その経験を踏まえると、PMとは、管理の要素はあるものの、それ以上に事前の準備や計画こそがもっとも大事です。プロジェクトについてのあらゆる要素を網羅し、全体の絵を描けるかが成否の鍵を握ります。私たちの現場感覚だと、事前の準備がプロジェクト自体の成否の7~8割を占め、しっかりと準備ができれば、トラブルの芽の多くを取り除けます。“マネジメント=管理”という意識にとらわれすぎると、準備が疎かになるため要注意です。

Web制作会社にフォーカスして考えてみます。規模感が大きくないWebサイト案件だと、数カ月のスケジュールが主流です。そのため、専任のプロジェクトマネージャーを置ける予算がなく、周囲の理解も得られにくく、現場のディレクターが兼任することも多いでしょう。“失敗しないPM”を遂行するなら、理想は専任で立てることです。兼任だと作業を優先してしまい、全体の作業状況を把握するなどの管理が疎かになりがち。兼任でしかプロジェクトマネージャーを置けないなら、本特集でPMの肝を理解してください。現場が円滑に進行し、クライアントとも良好な関係性を築くコツがつかめます。

PMを考えるとき、強調しておきますが、管理を始める前に事前の準備にしっかり注力しましょう。そうすれば、プロジェクトに関わるあらゆる要素が網羅できるようになりますし、プロジェクトの精度が高まります。自ずとクライアントとの齟齬は減少するでしょう。

 

 

PMの3大要素はスコープ・計画・管理

管理のほかに事前の準備(スコープ、計画)も大切に!

PMは、「スコープ」「計画」「管理」の3つの要素で成り立っている、と私たちは考えています(01)。これら3要素について突き詰めておけると、プロジェクトに抜けや漏れのない形で携われる確度がグッと高まります。

順番に説明すると、最初に「スコープ」を決めます。ここでのスコープとは、つくるモノ/コト、目指す姿を指します。そもそもプロジェクトで何をつくり、何を達成するのかを定義しましょう。プロジェクトの対象となるWebサイトやシステム、サービスなどの定義を行い、その実現のための作業範囲について決めていきます。

次に「計画」を立てます。プロジェクトのゴールに向かって、どのような作業が考えられるのか。しかも、いつまでにやる必要があるのかという、タスクとスケジュールを定義します。

最後に「管理」です。ここまでに立ててきた計画が予定通りに進んでいるのか? どのような課題やリスクがあるのかを管理します。世に言うプロジェクトマネージャーは管理ばかりに意識が集中して、事前のスコープや計画に重きが置かれていません。「スコープ」を通じて何をつくるかをはっきりとさせて、どのような作業があるのかを洗い出し、それらをまとめて「計画」が練られます。さらに、練られた計画があるからこそ、その計画がきちんと進んでいるかを「管理」する意味が出てくるわけです。管理だけをしようとしてもうまくいかないのは、管理するための過程(=事前の準備)が突き詰めきれていないからだ、ということがわかっていただけたと思います。

つまりPMとは、全体の中身をきちんと把握してこそ実行できることなのです。

 

 

01 プロジェクトマネジメントを支える3大要素
スコープ、計画、管理という順番で、やるべきことを固めていく

 

計画段階と進行段階、それぞれで求められる動き方

次のプロジェクトに知見が引き継げる進め方を!

PMを支える3要素について、もう少しそれぞれの中身を見ていきましょう。3要素に対して、計画段階と進行段階で分けると考えやすいです。プロジェクト全体の絵が描けるように、スコープ→計画→管理の順番で中身を詰めて、プロジェクトの中身をまとめていきます。

私たちは、すでに動き出しているプロジェクトに対して「うまく回っていないから」と立て直しを求められて、途中からPMを行うケースが少なくありません。その場合によくあるケースの1つが、こうしたスコープや計画、管理に関するプロジェクト計画書やマスタースケジュールなどが、一切用意されていないことです。

特に規模の小さな案件ほど、用意しなくても何とかなってしまうケースもありますが、それだといつまでも知見が引き継がれず、うまくいかなかった要因の改善につながりません。例えば、Webサイト案件だと、ある程度のプロジェクトの進め方が決まっています。こうした、予測や読みがききやすい部類の案件を通じて、PMが確立できるようになると、将来的に中大規模で、一定以上のシステムの実装なども含めた案件に遭遇しても、自社でイニシアティブを取りながらプロジェクトに携わりやすくなります。

現場に近い感覚を持つ人ほど急いで作業に入りたがる傾向にありますが、少しでも最初に立ち止まり慎重にスタートした分、最終的には効率的に進めるものです。手慣れた案件で、自社のあり方を見直しながらPMを構築できると、その土台が次以降のプロジェクトに引き継げます。02を参照し、行っていなかったことから重点的に見直しましょう。

 

 

02 計画段階と進行時に行うべきこと
スコープ、計画、管理の各フェーズについて、計画段階と進行段階のそれぞれでやるべきことをもう少し細かく分けて考えて、まとめた表。WBSはWork Breakdown Structureの略で、プロジェクトの各工程を細かく管理したデータのこと

 

さまざまな管理体系の理解と実行

どれほどPMBOKを現場で運用できるか?

みなさんはPMBOK(ピンボック)という言葉を聞いたことがあるでしょうか。PMBOKは、Project Management Body of Knowledgeの頭文字を取った略称で、国際的に標準とされているPMのフレームワークです。本格的にPMを見直すなら、PMBOKで示された「10の知識エリア」(スコープ管理、スケジュール管理、品質管理、コスト管理、人的リソース管理、コミュニケーション管理、リスク管理、調達管理、ステークホルダー管理、統合管理)を把握し、どのプロジェクトでも実行できるのが理想です。

わかりやすい言葉でまとめ直した03を見ていくと、どれもプロジェクトの遂行に必要な項目だとわかります。これらの項目に対する事前の準備や管理をすべて行うことを考えるなら、なるべく専任のプロジェクトマネージャーを設けたい理由も見えてきます。

プロジェクトマネージャーが兼任で、他にも作業を持っていると、自分の作業の遅れが気になるので、どうしても管理がおざなりになりがちです。プロジェクトの進行が遅延したら、ついつい作業のヘルプに入ってしまうことも多いと思います。もちろん、一時的に問題が回避できる場合はありますが、プロジェクトの状況把握や問題点の分析、作業の優先度付けができていない限り、遅延がさらに悪化したときなどにすぐに行き詰まります。

他業務を兼ねてPMに携わる場合でも、可能な限り作業を優先せず、03を念頭に状況を整理したり、問題の原因を分析する方向に意識を向けた方が、チーム全体としてはうまく回ります。

 

 

03 PMBOKに基づく説明
PMBOK(Project Management Body of Knowledge)と呼ばれるワイヤーフレームで「10の知識エリア」として示された各種の管理体系の要素を洗い出し、わかりやすく言い換えた表

 

特に優先したい、「何を」「いつ」「誰」の準備

必ず「要件」と「仕様」に関する凍結タイミングを設けよう!

みなさんはPMBOK(ピンボック)という言葉を聞いたことがあるでしょうか。PMBOKは、Project Management Body of Knowledgeの頭文字を取った略称で、国際的に標準とされているPMのフレームワークです。本格的にPMを見直すなら、PMBOKで示された「10の知識エリア」(スコープ管理、スケジュール管理、品質管理、コスト管理、人的リソース管理、コミュニケーション管理、リスク管理、調達管理、ステークホルダー管理、統合管理)を把握し、どのプロジェクトでも実行できるのが理想です。

 

 

04 PM項目、管理の優先度
実際の現場でなかなかすべての項目を行うのが難しいなら、せめて「常に注視/重要視」の3項目は優先的に対応すること

 

Text:遠藤義浩