UX視点で捉えるFacebook運用 事例詳細|つなweB

SNSは、企業サイトやブランドサイト以上にユーザーとの距離が近いメディアです。だからこそ、ユーザーの視点を大事にした運用が成果を大きく左右します。Facebookを事例に、UX視点を取り入れたSNS運用を考えてみましょう。

 

Facebook運用を見直す3つのステップ

Facebookページを始めたものの、運用しても反応を得られず、社内からも評価されない状態で留まっている企業は少なくないでしょう。それを見直すために取り入れたいのがUXの視点です。ここではこれを、「現状把握と検証」「企画と制作」「レポートと振り返り」という3つのステップで実践的に紹介していきます。

(1)現状把握と検証では、まず自社の投稿内容を数字で見える化します。併せて、同業他社などベンチマークとなる他のFacebookページの投稿についても同様の表をつくり、比較しながら自社の状況を見直しましょう。また、読者層も改めて確認する必要があります。自社の商品やブランドのターゲットと、Facebookページの読者は重なっていないかもしれません。それらを調べた上で、自分たちにできていること・できていないことを把握していきましょう。

(2)企画と制作では、ユーザーの立場でクリエイティブに向き合っていきます。とはいえ、UXデザインで行われるユーザーインタビューやカスタマージャーニーマップほどのコストや労力は、Facebookページにかけられないことがほとんどでしょう。そこで、(1)で分析した情報が役に立ちます。数字を読み込んで読者像を想像し、どんな目的でどんなポイントをどのように届けていきたいか、考えてみましょう。それぞれの投稿で何をしたいのか、目的を明確にしておくことが次のステップへつながります。

(3)レポートと振り返りでは、毎月の投稿を(1)と同じような形式で表にまとめながら、(2)で設定したそれぞれの目的をどれだけ達成できたかを評価します。これによって狙いがうまくいった場合・いかなかった場合の知見が蓄積され、次の企画に活かすことができます。

SNSは(特にFacebookは)企業にとってユーザーの反応や商品とのリアルな関係性をダイレクトに知ることができる場です。ここでの知見はSNSの運用に役立つだけでなく、全体のマーケティング活動へ還元されることもあるでしょう。

そのためにも、読者を理解した上で目的を持った投稿を繰り返すことが重要になります。では、実際にワークシートを使いながらステップをたどっていきましょう。

 

自分たちの現状を把握し、検証してみよう

初めの一歩は、まず現状がどうなっているのかを数字で把握することですそれを読み込むことで読者のリアリティを感じ、投稿への反応やアクションから行動とその理由を推測していきましょう。自社のページに必要なものが見えてくるはずです。

数字の検証から、良い点・悪い点を洗い出し

Facebookは投稿することがゴールではなくスタートです。投稿に対する読者の反応から次の取り組みが始まります。しかし、ただいいね!やシェアの数を見守るだけではやるべきことは見えてきません。そこで、まずは一覧にして俯瞰してみましょう。自社の直近10件の投稿について、投稿内容とリーチ数・反応数(いいね!・コメント・シェアの数)・エンゲージメント率を右の表Aに記入します。

それができたら数字と内容の関係を読者の目線で検証してみましょう。いいね!が少ない投稿は、読者の興味にあっていたでしょうか? コメントが少ない投稿は、情報が一方通行ではなかったでしょうか? 一つひとつの数字から何に対してどんな反応があったのか・なかったのかを検証し、読者の行動を推測してみましょう。参考にしている他社のページがあれば、その投稿についても同じように記入し比較します。大きく異なる点はあるか、その理由は何か、考えてみましょう。

次に、どんな人が投稿を見ているのかを確認します。ファン(Facebookページにいいね!をした人)と、記事がリーチした人、アクションした人の性別・年代などの構成比を右のグラフBにそれぞれ記入してみましょう。構成比が異なっているものはありませんか? ファンの構成比だけを見て投稿内容を考えていないでしょうか。

またグラフだけでなく、いいね! やシェアをしてくれた人の一覧を表示して目視することも大切です。名前やアイコンなどから、数字以上のリアリティを持つことができます。A・Bの結果と併せて、自社の投稿をどんな人が見てくれているのかを理解しましょう。

このように現状の検証を行った上で、右の表Cで自分たちの投稿の良い点・悪い点をチェックしてみましょう。できていない項目については、参照ページのワークシートを参考に改善策を考えていきます。

 

企画・制作では訴求ポイントを明確にしよう

投稿のクリエイティブ制作にあたっては、見た人に何を伝えどう反応してほしいのか、訴求ポイントと目的をあらかじめ明確にしておきましょう。これによって内容のブレない投稿ができるだけでなく、後から振り返った時にわかりやすく評価することができます。

目的を明確にし、きちんと伝わる形で投稿を

投稿内容を考えるその前に、一度自社のFacebookページそのものの目的に立ち返ってみましょう。本来目指すべき方向は「認知の拡大」でしょうか、「ユーザーとのコミュニケーション」でしょうか、それとも「店頭での購買」でしょうか。それに対して、(1)で分析した結果を照らし合わせてみましょう。目的と投稿内容との間にギャップは生まれてないでしょうか。実際の読者層に向けた投稿内容になっているでしょうか。本来の目的のために、投稿一つひとつにどのような役割を持たせればいいのか、改めて考えてみましょう。

そのために活用したいのが右ページDの投稿予定カレンダーです。全体を俯瞰するために1カ月の投稿予定をあらかじめ立て、各投稿に訴求ポイントとその目的を設定した上で、それを伝えるための内容を考えていきます。データの取れるものを目的に設定することで、後から成果を評価しやすくなります。また、行き当たりばったりでチグハグな投稿をしたり、間隔が不定期になることも避けられます。

クリエイティブを制作したら、右ページEのように読者目線で見直しを行いましょう。冒頭テキストや写真は興味を引くものになっているでしょうか。企業目線の伝え方になりすぎていないでしょうか。訴求ポイントは十分に伝わるでしょうか。タイムラインの中でどう見えるかにも気を配りましょう。

TwitterやInstagramから今のトレンドやビジュアルのヒントを探すのもよいでしょう。ただし、流行に飛びつくだけでは長期的に見て成果に結びつきません。いわゆる

“インスタ映え”写真がFacebookで評価されるとは限らないように、Facebookに適したクリエイティブを探る必要があります。

クリエイティブの形に正解はありません。読者の反応を見て、繰り返し試行錯誤を行っていきましょう。

 

レポートを振り返り、次の企画へつなげよう

カレンダーの予定に沿って投稿ができたでしょうか。投稿実績を一覧表にして振り返り、読者目線で分析してみましょう。数字から読者の行動を読み取ることが、次のアクションへつながります。さらに、長期的な視点でも取り組みの成果を振り返ってみましょう。

成果の要因を読者目線で考察

前ページDのカレンダーで予定を立てた投稿は、実際にどの程度目的を達成できたでしょうか。右ページFの一覧表にまとめて評価してみましょう。最初の分析と似ていますが、ここではカレンダーで設定した目標も記入するのがポイントです。目標をどれだけ達成できたのか、できなかったのかを評価し、その要因が何なのかを考えていきましょう。

例えば、Fの例1でいいね!が多かったのはなぜでしょうか。以前の同じ種類の投稿より成果がよければ、内容が興味を引いたのかもしれません。例2でシェアを獲得できなかったのはなぜでしょうか。画像から内容がわかりにくかった、長くて読み切れなかった、シェアするほど興味を持たれなかった…など、数字の裏にどんな行動があったのかを考えていくと、さまざまな発見や改善点が見つかるはずです。逆に反応の悪かった投稿に関してもその理由を考え、改善点を見つけていきましょう。

さらに、表Gのように年間の推移や前年同月とも比較してみましょう。ファン数と各指標の間にどんな連動が見られるでしょうか。成果の特に良かった月は、どんな理由があったのでしょうか。また、前年同月と比較してどんな取り組みを行い、どんな結果が得られたでしょうか。

これらの考察を元に、Dのカレンダーに戻って再び翌月の投稿のアイデアを検討していきます。単に成果のよかった種類の投稿を繰り返すのはでなく、読者の立場で何を読みたいか、読んだ結果どう反応してほしいか、という方向から考える視点が重要です。それをゴールとして、投稿内容はこれで良いか、文章と画像は適切か、ターゲットとマッチしているか、などを確認しながら投稿を積み重ねていきます。クリエイティブに正解はありませんが、ゴールの方向へ進む道は見つかるはずです。読者目線にあわせるためのチューニングを繰り返していきましょう。

 

教えてくれた人…五十嵐友子さん
Webアナリスト HCD-Net認定人間中心設計専門家。データ分析、インタビュー調査などを使ってユーザー視点をふまえたPDCA活動を実践
堀内麻貴さん
プロデューサー デジタルを主軸としたプロデュースとプランニングをメインに行う。クライアントの要望から、設計したIMC設計~実施まで担当
洪如觀さん
ディレクター 商品やキャラクターを活用したウェブコンテンツやプロモーションの企画立案から制作まで幅広く従事。台湾出身

 

Text:笠井美史乃 Illustration:高橋美紀