SNS運用のためのCMS活用術。ストックとフローを意識する! 事例詳細|つなweB

企業のWebマーケティングにSNSは大きな効果を発揮します。しかし、顧客との関係構築にはそれだけでは不十分。今回はCMSを利用したオウンドメディアとSNSの連携について考えていきます。

 

【SNS担当 仲野ヒトミ】
とある中堅メーカーに勤務する仲野さんは、ある日SNSアカウントの担当に指名されました。企業アカウントの「中の人」としての活動をウォッチしていきます。

 

ストックとフローの違いを意識する

SNSアカウントを運用している企業の多くは、自社のWebサイトやブログ、メルマガなどを顧客接点として持っているのではないでしょうか。

それぞれの運用を外部に委託するか会社の「中の人」で回すか、ECサイトなど商品の販売も行うかどうかなど、その戦略は会社の規模や事業の目的などによって千差万別です。しかし、SNSが発展して購買メディアとしての機能を持ち始めた現在でも、WebサイトやCMSを用いたブログの存在は必要不可欠と語るのはSNSコンサルタントの田村憲孝さん。

「SNSの仕事をしている私が言うと不思議に思われるかもしれませんが、社内ブログや継続的に更新するコンテンツはほとんどの場合で必要です。SNSとどちらに力を入れるべきかは目的次第ですが、トリプルメディアでいうところの“オウンドメディア”とSNSなど拡散に適した“アーンドメディア”は扱う情報の性質が大きく異なるので両方が欠かせません」

その違いとは、CMSで構築するブログなどの記事は「ストック」として蓄積されていき、検索からの流入が基本となるのに対して、即時性の強いSNSは「フロー」として流れ続けるという性質が強いというものです。この根本的な違いを捉えて、それぞれのメディアの間で人の流れを循環させていくことが重要です。そして広告などの“ペイドメディア”は、このサイクルの流れを加速するアクセラレータとしての役割を果たすのです。

さらに、それぞれのユーザーの動きを可視化する解析ツールも普及していますが、「これまで以上にオーガニックなコンテンツが求められるようになる」といいます。

 

メディア集客モデルの大きな変化

また、各メディアの役割の違いを知るのと同時に意識しておきたいのが、メディアの集客モデルの構造的変化です。

かつてTVや新聞・雑誌などマスメディアが主流の時代は、情報の伝播は一方的でした。ところが、インターネット登場以降は情報の流れが双方的になる一方で、情報発信力の強いインフルエンサー型のモデルが現在進行形で広まっています。

そしてスマホの普及によって、情報発信者と受信者の関係性はさらにフラットにななりつつあります。もはや特定のメディアや個人に依頼すれば企業が望んだとおりの情報を伝えられるということは難しい時代なのです。時として情報が一人歩きする「シミュラークル(虚像)型」の操作不可能な状況下では、リアルタイム性の高いSNSと幅広く役立つコンテンツを織りなして対応していくことが企業のメディア運用の肝となるのです。

「何が理由でSNSの投稿が跳ねたり、ブログの記事が読まれるか、過去のデータの分析だけでは予測できません。ましてや短期間で成果を求めることは困難です」

 

社内は宝の山外部視点を意識しよう

しかし、そこで問題となるのが人手のリソース不足やコンテンツの「ネタ不足」です。予算に余裕があれば外部のコンテンツメーカーに依頼することもできますが、基本的には自社や事業に関する知識を一番持っているのは社内の人たちです。普段当たり前のように感じていることであっても、社外の視点からは驚かれることもあり、不意なきっかけで注目を集めることもあるといいます。

「外部視点を客観的に持つのは難しいことです。しかし、少し見方を変えて、例えば中途入社の社員にヒアリングするなどでヒントを得られることもあります。地味なテーマでもコツコツと積み上げていくことで、いざ大きな反応があったときにSNSから記事への誘導もできます。また、季節性のあるテーマを蓄積しておくことも効果的です。その会社にとっての『辞書』をつくるイメージで普段から取り組むことをおすすめします」

さらに、テキスト中心のコンテンツ制作以外の可能性についても聞いてみました。

「1つは動画の利用ですね。YouTubeであれば、そのメディア自体でもストックされて検索の対象となりますし、動画へのリンクをCMSで記事やSNS投稿に埋め込むだけなので更新も楽です。しかし、成果が出るまでの時間がかかる傾向にあるため、慎重な判断が必要です」

また、集客自体が困難と感じるのであれば、SEOに依存せず最初から人が集まっているプラットフォームにコンテンツを発信するのも1つの選択肢といいます。

「難しさもありますが、自社の運用目的とマッチする外部メディアを発見できれば、大きな効果が期待できるでしょう」

 

 

教えてくれたのは…田村憲孝
SNSコンサルタント ソーシャルメディア研究家 ウェブ解析士協会 SMM研究会代表

 

Text:栗原 亮 Illustration:シライカズアキ