サイトを事業成長に活用するには、そもそもの事業構造を整理し理解しておく必要があります。事業構造は業種・業態によって違いますが、その一例をKaizen Platformの多田朋央氏にご紹介いただきました。
ECサイトではリピート率の向上が鍵
サイトをどのように活用すべきか考えるためには、まず事業構造を把握することが重要です。どうすれば売り上げが伸びるか、あるいは減らないのかというポイントは業種・業態で変わってくるため、整理していきます。それにより、何をKPIとすればよいかが見えてきます。
例えばECサイトの場合は、新規の顧客獲得とあわせてリピート率を上げることが重要になってきます。なぜなら、新規顧客の獲得には広告出稿や獲得施策といったコストがかかりますが、リピーターになってもらえればそうしたコストはかかりません。しかも継続的に購入してくれる人が増えればそれだけ事業も安定し、実際に大抵のECサイトではリピーターが売上の多くを占めています。
それを事業構造で見ていくと、リピーターのコンバージョン率がKPIとなり、そのためにサイトでどのような改善や施策を行っていけるかを考えていきます。使いやすいUIにしたりカゴ落ちが起こりにくい工夫をしたりという新規顧客向けと同様の施策ももちろんリピーターに有効です。それらに加えて、既存会員向けにクーポンやメルマガで購買を促したり、ポイント制度を用意したりと、継続的に利用したい、利用しやすいと思われる施策などが考えられます。
サブスクリプションでは集客以外も注力しよう
動画配信サイトなど、月額定額制のサブスクリプションサービスは増えています。そうした事業の構造整理を行うと、収益最大化において重要なポイントが3つあります。
1つ目は新規顧客獲得で、多くの場合、一定期間無料で使えるようになっています。2つ目は、無料期間終了後の有料会員への転換、そして3つ目は解約です。その中で実際に売上に関わってくるのは、2つ目と3つ目になります。いかに有料会員へと転換する確率を増やし、解約される確率を減らすかがKPIと考えられます。
実際の例では、無料の新規会員はたくさん獲得できているのに、有料会員への転換率が低かったため理由を探っていきました。すると、登録するだけでポイントがもらえるというようなキャンペーンを行い、そもそもサービスを利用するつもりのない質の低い顧客を集めてしまっていたというものがありました。そこにマーケティング費用をかけるよりも、有料転換が期待できる質の良い顧客獲得の施策に予算を使う方がよいという課題がわかりました。
他にも証券会社では、口座を開設してから証券取引などを行うと初めて売上が立つのでそれをKPIとしました。口座を開設したけれど「興味はあるが知識がない」という理由で取引しないままの人が多いことがわかり、証券情報のコンテンツを充実させたところ改善したという例もありました。
新規獲得に注力する企業は多いですが、事業構造を整理し問題の本質を特定することで、何をすれば本当に効果が上がるのかが見えてきます。