映像クリエイター直伝! オンラインイベントの[ハイブリッド配信]術 事例詳細|つなweB

オンラインイベントを企画する際に、情報発信のスタイルをどう考えればよいのでしょうか。ライブ配信の利点を活かしつつ、さらなる効果を得るための配信方法について映像クリエイターの大須賀淳さんに聞きました。

 

「ライブ」の価値はコミュニケーションにある

この数年で企業カンファレンスや展示会、セミナーなどオンラインイベントが定着してきました。リアルイベントが時間と場所を共有する体験自体が希少な価値であったのに対して、オンラインイベントは配信者と視聴者の双方向コミュニケーションが本質的な価値となります。この違いを意識せずにオンラインイベントを企画するのは問題があると指摘するのは、映像クリエイターの大須賀淳さん。大須賀さんは企業の映像コンテンツなどの制作を手がける一方、自らも大型のオンラインイベントでプレゼンター役を務めた経験も持っています。

「ライブが基本となるリアルイベントと異なり、オンラインでは必ずしもライブ配信だけが最適とは限りません。一方通行の情報発信ではライブの価値を引き出しているとは言えません。イベントを企画する人は、それって本当にライブにする必要がある? と一度考えてみるとよいと思います」

 

ライブと録画のハイブリッド配信とは

しかし、ライブ配信の中でリアルタイムで視聴者とコミュニケーションをするのは困難が伴います。そこで活用したいのが、ライブ配信中に録画済みの映像を挿入するハイブリッド配信という考え方です。

「ライブ配信と録画映像のオンデマンド配信という分類だけで考えないことが重要です。私がプレゼンターとして参加したクリエイティブカンファレンスでは、セッションの内容は録画済みの映像を流し、チャット欄で視聴者からの質問にリアルタイムで答える方式を採りました。また、別のイベントでは1時間のセッションのうち前半45分を録画で後半15分をライブでという構成も見たことがあります。大型のオンラインイベントではすでに主流となりつつある配信方法です」

特にセミナーなど講座型のコンテンツはハイブリッド配信との相性が良く、配信者にとってはアクシデントが少なく、視聴者も気軽にすぐ質問できるなどイベント参加者双方にとってメリットがあるといいます。

「クローズドな研修などであれば、講義の内容は事前に録画映像を見て課題に取り組んでもらい、ライブ当日は提出された課題を添削しながらディスカッションするという方法も可能です。問題解決系の企画では、録画映像をライブ配信とどう組み合わせてコミュニケーションを取るかがポイントになってきます」

 

オンラインイベントをライブでやる意味とは
現在オンラインイベントで広く用いられる「ライブ配信」と「オンデマンド配信」にはそれぞれ強みと弱みがあります。双方のメリットを取り入れた「ハイブリッド方式」による映像配信を紹介します

 

ハイブリッド配信の基本パタ ーン
ハイブリッド配信には、指定時間に事前収録した映像を配信しつつ、チャット画面などで配信者がリアルタイムで質問に受け答える方法(図上)や、録画した映像を流したあとに続けてライブ配信を開始する方法(図下)が基本パターンとなります

 

「雑誌」をつくるようにオンラインイベントを計画する

オンラインイベントを成功に導くにも、ハイブリッド配信の考えが役立ちます。

「いきなりオンラインイベントを実施して集客できるのは、基本的にブランドが確立した企業がほとんどです。そこまでの認知度がないのであれば、普段からSNSやYouTubeチャンネルで短いライブ配信を定期的に発信し、フォロワーやファンに対する感謝サービスとしてオンラインイベントをするのが現実的でしょう。継続的にコンテンツを蓄積していれば最低限の手間でイベントを実施できるのもメリットです」

あらかじめテーマごとの録画映像をストックしておき、ライブ配信を交互に組み合わせる手法はTVの情報バラエティ番組や紙の雑誌づくりにも通じるものがあり、オウンドメディアを運用する企業がオンラインイベントを計画する際にもに参考になるはずです。

「短めのライブ配信であれば一般の会社でもWebサイトの動画パンフレットの延長で取り組めるはずで、オンラインイベントは年に数度の展示会やお客様相談会と位置付けるのがよいでしょう。いずれにせよ、それぞれの顧客が求める情報や期待に個別最適化することがオンラインイベントの理想的な姿と言えます」

また、ハイブリッド配信のプラットフォーム選びについては、目的に応じて使い分けることが重要といいます。

「認知獲得が目的で集客が青天井であれば映像と音声の品質が良いYouTube Liveが適していますし、参加費を徴収するイベントや少人数の見込み顧客へのクロージングであればZoomなどのオンライン会議ツールが適しています」

 

ライブを取り入れたコンテンツ計画
顧客との継続的な関係構築を目指すのであれば、定期的に短めのライブ配信を実施しておき、ライブ本番にはファンイベントとして編集した録画映像と追加のライブ配信を組み合わせる「番組」づくりも効果的です

 

 

オンラインイベントの個別最適化画
ライブ配信を一方的に行うのみでは速報性以外の価値を提供することは難しいです。視聴者が求める情報は人によって異なるため、普遍性のある情報はテーマごとにアーカイブしておき、ライブ配信による双方向コミュニケーションで内容を補足する「個別最適化」がオンラインイベントならではの価値となります

 

 

オンラインイベント成功の法則

優れたオンラインイベントに共通する要素として、時宜にあったテーマ選びと双方向コミュニケーションを促す仕組みがあります。これらを欠いたライブ配信イベントは「退屈な訓示」となってしまう危険性があります。ライブと録画それぞれの利点を理解した上で、これらを組み合わせたユニークなオンラインイベントを企画しましょう。

? ライブの価値は双方向性
? 録画映像の価値は普遍性
? ハイブリッドの組み合わせは多彩
? 配信ツールは目的で使い分ける
? イベントの最終目標は個別最適化

 

大須賀淳
映像クリエイター ・音楽家 スタジオねこやなぎ代表 https://junoosuga.com/

 

Text:栗原亮(Arkhe)
※Web Designing 2021年10月号(2021年8月18日発売)掲載記事を転載