Web接客の[動画活用]最前線 事例詳細|つなweB

「新常態」の時代を迎え、対面が中心であった営業や販売、マーケティングの世界に大きな変化が起きています。それはECの分野も例外ではありません。そこで「動画」の果たす役割は何か、Web接客ツールを開発・提供する株式会社SprocketのCEO深田浩嗣さんに話を聞きました。

 

お店から自宅にやってくる「接客」のパラダイムシフト

動画を活用した「オンライン接客」や「デジタル接客」というキーワードに注目が集まっています。しかし、そこで重要となるポイントは動画自体のフォーマットよりも「そこに『人間』の存在を感じられるコミュニケーションがあるかどうか」と語るのは(株)Sprocketの深田浩嗣さん。

特にリアル店舗での接客体験で顧客満足度を高めてきた企業では現場レベルでも危機感が高く、接客のデジタルシフトへの要望は日に日に増していると言います。

「ECを展開している企業でも、店舗を持っている場合は店員さんのリソースをどう活かしていくかという喫緊の課題があります」(深田さん)

動画によるオンライン接客はコロナ禍以前から行われていた施策もありますが、アパレル分野では個別にZoomで接客する取り組みや、店舗スタッフが着こなしや商品説明の動画コンテンツを発信する取り組みなどがあります。

「対面が中心であった店側からライブコマースやインスタライブ(IGTV)、Zoomなど動画を用いたオンライン接客に乗り出す現象は、いわば接客における『パラダイムシフト』です。危機がきっかけで一気に進んだのだとしても、前向きに捉えるとよいと考えています」(深田さん)

 

スマホ動画がつくり出す「店員」のコンテンツ化

また、新常態のオンライン接客では「スマホ×動画」の活用もポイントです。

「スマホ動画は機材面の制約が少なく、店舗スタッフが撮影できて効率的です。商品説明が不慣れでも、そこにはある種のリアリティが生じて親近感につながります。何よりこれまでオンラインにはいなかった『店員』というコンテンツが登場したのが大きな変化です」(深田さん)

そして、オンラインで接客を受ける顧客側の心理や行動にも変化が生じています。例えば、ECではリアル店舗に訪れる際の「非日常感」は得にくいため、リラックスした日常の延長で店舗スタッフと接するコミュニケーション設計が重要となってきます。

「もちろん、ECに丁寧な接客を求めない人もいるでしょう。しかし、高齢者をはじめ、これまでインターネットを利用してこなかったユーザー層は急速に増え、今後もその傾向は変わらないと思います。自分で探す・選ぶ・決めるという従来のオンラインによる体験設計の前提は根本的に変わっていくのではないかと考えています」(深田さん)

 

DX推進プラットフォーム Connecty CMS on Demand
2020年7月に実施された日経クロストレンドの調査では、マーケティングキーワードに「デジタル接客」が追加され、その将来性スコアは「EC」に次ぐ4.19をマークしました。ただし、同調査でのデジタル接客は「Zoom接客」から「有人チャット」まで含んだ広い概念であることに注意が必要です 日経クロストレンド「トレンドマップ 2020夏」を元に作図
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/watch/00013/01106/

 

オンライン接客に必要な3つの機能
「接客の価値を実現するには①声をかける②質問する③案内する、という3つの機能が必要です。ECエバンジェリストの川添さんが整理された図に当てはめると、すべての機能を1つでカバーできる動画手法はありません。自社のユーザーにどの組み合わせで接客していくかという視点で考える必要があります」(深田さん) ※株式会社ベイクルーズ加藤利典氏の資料および川添隆氏が編集した図表を元に作図
https://evanh.jp/n/n2c5dd5aa2efc

 

インスタライブをECサイト上で展開

オンライン接客における店員と顧客の新たなコミュニケーションのあり方が模索されている今、そのモデルとなり得るのがInstagram(インスタグラム)の動画共有機能「IGTV」だとカスタマーサクセス担当の八木祐介さん。リアルタイム性とインタラクティブ性を備え、配信動画をアーカイブしてコンテンツを資産にできるからです。

ただし、IGTVにはサービスの仕様上、プラットフォーム外の不特定多数の顧客に動画を届けたりコメント欄からの遷移が難しい問題があります。SprocketではIGTVの動画をECサイト内にポップアップ表示することでこの課題に対応しました。

「ジョンブルさんのECサイトで、IGTVを利用した接客を実施しました。店員さんが実際に着て見せることでサイズやフィット感をわかりやすく説明されていて、ここには接客のプロとしてのノウハウが活かされていると感じました」(八木さん)

ECに限らず幅広いリテラシー層がオンラインに増えつつある現在、自分自身で決め切れなかったり不安や疑問を抱えたまま離脱するユーザーに対するフォローアップやコミュニケーションが重要になると深田さんは語ります。

「私たちがWeb接客にポップアップ技術を採用したのは、適切なタイミングで迷っている人に『声をかける』という接客の基本を表現できる唯一のUIだと思っているからです。そして、ここに動画を組み合わせることでさらに効果が出るのではないかとも考えています。少なくとも、ECに動画を取り入れるのであれば、顧客体験を高めるための意識がこれまで以上に強く求められるのではないでしょうか」(深田さん)

 

動画を利用したWeb接客でCVが改善
Sprocketではファッションブランド「ジョンブル」公式ECに動画を用いた接客を導入しました。写真上は夏向けマスクを製造する工程をYouTube動画でトップページにポップアップさせた例、写真下はインスタライブ(IGTV)で店舗スタッフの着こなしを表示した例です。「テスト的な側面もありましたが、動画では素材の質感や通気性といったテキストや画像だけでは伝わらない点を補えたのがよかったです」(八木さん)
https://www.privatelabo.jp/

 

オンライン接客に必要な3つの機能
「接客の価値を実現するには①声をかける②質問する③案内する、という3つの機能が必要です。ECエバンジェリストの川添さんが整理された図に当てはめると、すべての機能を1つでカバーできる動画手法はありません。自社のユーザーにどの組み合わせで接客していくかという視点で考える必要があります」(深田さん) ※株式会社ベイクルーズ加藤利典氏の資料および川添隆氏が編集した図表を元に作図
https://evanh.jp/n/n2c5dd5aa2efc

 

動画で接客の価値を高めるには

ECも動画も、ただ導入するだけでは時代の大きな変化に適応することは困難です。リアル店舗とECを分ける従来の発想を捨て、ECとリアルで培った接客の価値をどう再現し、高めていくかが重要となるでしょう。動画はそれを補完する強力なツールですが、複数の手法を組み合わせる必要があります。

? オンライン接客の手法は多様
? 店舗スタッフを有効活用
? 顧客層の変化を見逃すな
? ライブ性と双方向性を重視
? 接客の本質的価値を考えよう

 

深田浩嗣
株式会社Sprocket CEO https://www.sprocket.bz/
八木祐介
株式会社Sprocke カスタマーサクセスチームシニアコンサルタント

 

Text:栗原亮(Arkhe)
※Web Designing 2021年6月号(2021年4月16日発売)掲載記事を転載