漏れなく事故なく! CMSの運用体制チェックリスト 事例詳細|つなweB

CMSでコンテンツを制作する体制をつくるために、現状把握と課題を整理していきましょう。CMS導入の目的に見合ったテーマは何か、更新し続けるために必要な承認フローやトレーニングについても検討します。

 

具体的なCMSツールの選定の前に、自分たちはCMSによってどのような課題を解決したいのかを整理しましょう。すでに自社のWebサイトを運用しているのであれば、その何が問題なのかをリストアップしておきます。もし、今のWebサイトが「イケてない」と感じるのであれば、それは見た目のデザインなのか、情報の整理がされていないからなのか、写真や文章の内容がつまらないからなのか、あるいはそのすべてなのかを具体的に書き出しておきましょう。

そして、CMSで新しいWebサイトを構築するのであれば、運用したい目的は何か、その目的を実現するために誰に向けてどんな情報を発信していく必要があるか、それを実現するにはどのような体制をつくりあげていく必要があるかなどを事前に検討します。特にCMSは1人で管理するよりも、複数人で運用することで効果を発揮するシステムなので、運用に関わるメンバーの認識合わせは欠かせません。どこがゴール地点で、どこがスタート地点なのかをいつでも振り返れるように、ドキュメントをまとめておきましょう。

CMSは便利な道具ですが、使い道を間違えると手間の割には役に立ちません。まずは、自分たちがやるべきことは何かを改めて整理しておきましょう

 

CMSの選定や導入自体はWeb制作会社と相談して進めることができます。しかし、その中身をどのようにつくりあげていくかは社内の担当者でないと決められない部分が大きいです。そのため、担当者はCMS運用に投入できる社内の人的リソースやそれぞれのスキルレベルを把握しておく必要があります。また、会社によっては複数の部署が関わることがあるため、誰を運用メンバーに加え、どれだけの時間と手間を投入できるかを部署ごとの管理者と事前に了承を得る必要があります。

写真と文章を管理ページに書き込むという作業自体は個人のブログ更新と基本は同じですが、一定以上の更新頻度と内容の品質を保ち続けるには管理スキルが求められます。少なくとも、本来の担当業務の「片手間」の認識では安定した運用は困難と言えるでしょう。もちろん、予算次第ではコンテンツの制作を外注する方法も考えられます。しかし、どこまでが外注可能な範囲で、どの情報を渡せば求める内容が得られるかという「発注スキル」が必要です。コンテンツ制作の外注にも多くのノウハウが求められます。

CMSに投稿する内容は写真やイラスト、文章が基本ですが、これらのコンテンツ制作には手間と時間が必要です。自分たちでどこまで実現可能か洗い出しをしておきましょう

 

コンテンツの「品質」といっても、その明確な判断基準を持たなければ正しく評価することはできません。それは、どんなに短くてシンプルな内容であっても同じことです。文章に関してよく言われるのは、日本語として正しい表現かどうか、伝えるべき情報に「5W1H」の要素が備わっているかというものです。特に企業が運用するWebサイトであれば小説や詩のような美文調である必要はなく、情報の正確さのほうが重視されます。どの担当者が書いても品質を維持するための、もっともシンプルな方法は記事の執筆マニュアルや表記ルールの作成です。そして、書かれた文章をCMSで公開する際には、少なくとも事前に2人以上がチェックすることも重要です。問題点を指摘された場合は、その間違いも運用チーム内で共有して文章の品質管理のレベルを向上させましょう。

さらに、CMSでの投稿に写真やイラストなどが関わってくる場合は、気を付けることがさらに増えます。デザインに関する担当者が社内にいる場合は分業も可能ですが、必ずしもすべての会社でそれができるとは限りません。その場合は、インターネットの素材集サービスを利用したり、プロのカメラマンやイラストレーターに依頼するのもひとつの方法です。しかし、もしそうであっても、つくりたい記事の雰囲気に写真やイラストがあっているかどうか、会社や商品のイメージなどを損ねるものでないかといったガイドラインを事前に決めておくことが重要です。これは広告の世界では「トンマナ(トーン&マナー)」と呼ばれるもので、企業のブランドを確立するために、ビジュアルで使用する色や書体などのルールを決めることでデザインの一貫性を保つための考え方です。

複数人で文章や写真を投稿する際には、表現についてのガイドラインなどを事前に準備しておくことをおすすめします。公開前に人の目で確認してもらうことも重要です

 

社内の協力を得て、コンテンツ制作に取り組む体制が整ったとしても、最終的に記事の公開を承認する責任者が必要です。CMSの管理者が兼ねることもありますが、一般的な企業では部門の上司にあたる人が最終的なチェックをすることが多いでしょう。単純なミスや追加したい内容が発生したなどの事情で差し戻されるのであればまだしも、「思いつき」で却下されてしまうのではコンテンツ制作に要した労力が無駄になってしまいます。このような事態に陥らないよう、進捗を共有するなど社内のコミュニケーションは重要なポイントです。

また、リモートワークなど働き方の多様化で、承認フローが予定どおり進められるかどうかも検討の余地があります。CMSは管理ページにアクセスできる投稿者や承認者に適切な権限を与えることで、自宅などからでも記事の投稿や修正が可能です。コンテンツ制作のガイドラインとあわせてさまざまなワークスタイルからの投稿と承認のフローを整備し、マニュアルの作成や研修、自主的な勉強会などを実施することも運用計画に盛り込んでおきましょう。また、こうした体制づくりは外部の制作会社などが連携する際にも役立ちます。

担当者個人のやる気や努力だけではCMSの継続的な運用は不可能です。投稿と承認の役割分担やルールなどは事前に検討しておき、それを実現可能なCMSを選定しましょう

POINT
CMSを動かすのは人の力
頑張らなくても続けられる仕組みを目指そう!

※Web制作・運用バイブル 2022(2021年11月8日発売)掲載記事を転載