補助金申請、クラウドファンディング…ネット施策の資金調達計画 事例詳細|つなweB

ビジネスに資金調達は避けては通れない道。補助金やクラウドファンディングの活用例も増えてきましたが、いずれにせよ問われるのは事業計画とその実現可能性です。数字的な説得力のある計画を作成しましょう。

 

お金がない…というお声、聞くたびに胸が痛くなります、しかしながら「ない袖は振れない」のも制作会社としての本音ではありまして…。

制作会社には各社のレベルに応じた価格相場があり、「憧れ」のサイトがつくれる制作会社への依頼は、ゼロ1個多い見積りになる場合も少なくありません。事業規模や業種にあわせて「背伸びしすぎない」ことも大切です。

かといって、49ページで見たように、予算がないことを理由に適切な提案を蹴ってしまったり、妥協したことで自信を持って営業活動ができなくなるのも本末転倒です。安価で知人にお願いして、ビジネスも人間関係もダメになってしまった話は、もはや日常茶飯事です。

資金に余裕がないと、それがプレッシャーになってしまい、「適正かどうか」ではなく「安さ」に流されてしまいがちです。もちろん高ければよい、安いのは悪というわけではありませんが、極端に安価な場合、トラブルになりやすいのも事実です。適正な価格相場で依頼が難しい場合、資金調達という方向性を考えてみましょう。

「デザインにこだわりたい」という意向が強い場合、予算不足で妥協してしまうと、後悔やモチベーション低下にもつながります。それならいっそ、資金調達にチャレンジしてみましょう ※ 制作予算は一例です。また、テンプレート制作が悪いというわけでもありません。

 

資金調達について、補助金、クラウドファンディング (CF)、銀行からの借入などが有力な選択肢でしょうか。ただここで一点注意したいのが、「理由もなくお金が手に入る道理はない」ということ。

出資する側になって考えると、「やりたい」ばかりで具体的な考えがない人と、事業計画や資金の使い道に具体性がある人、どちらに出資したいと思いますか? 銀行の融資は最たるものですが、補助金やCFにせよ、明らかに見込みがない人には誰も出資はしません。計画の具体性や実現可能性を論理的に説明できる必要があるのです。

そこで、資金調達が初めての場合、補助金ではなく銀行から借入すると「仮定」して考えてみてください。借金するということは、当然返済しないといけない。そうなると、このビジネスモデルで本当に利益を出せるのか、楽観的に考えすぎていないか、事業構想に穴はないか…等、胃が痛くなるほど真剣に考えるはずです。現実を直視した事業計画には、具体性や実現可能性が伴います。この強い計画性が、補助金やCFでも力を発揮します。

自分が出資する場合、「適正に使ってもらえるか」は気になりますよね。補助金やクラウドファンディングも同様で、事業計画を真剣に考え実施する力があるかを問われます

 

補助金を活用してのホームページ制作、という言葉も目にしますが、筆者個人としては推奨はしていません。というのも、まず補助額と労力が見あわない。そして十分な制作期間が取れない。なにより「補助金をもらうこと」が目的になりがち。これら3つの理由からです。

補助金は温情での金銭交付ではなく、本質は事業の拡大や立て直しにあります。無事に採択されても、「あぶく銭」に経営者の本分を見失わないようにしましょう。

ホームページ制作では、中小企業庁の「小規模事業者持続化補助金」がよく活用されます。管轄の商工会が窓口となり、事業計画作成のサポート等もしてもらえます。ただし、実際の温度感は各商工会によりけりで、結論、事業者自身で事業計画を書き上げられることが望ましいです。

申請に必要な事業計画は、求められる精度は補助金によりますが、おおよそ(1)自社と市場環境の分析、(2)現在の課題、(3)資金計画、の3点がポイントになります。

よく見れば、これまで本章で考えてきたことですね! SWOT分析やターゲット分析を経た今なら、ある程度書けるはずです。書き出せない場合は、SWOT分析でもう一度考えを整理しましょう。

特に採択に大きく影響するのは、(3)資金計画で、何にいくら使うのか、その結果どのくらいの収益が見込めるのか、その合理的根拠、等の説得性ある具体的な「数字」を示すことが重要です。

制作費や広告費については制作会社で回答可能ですが、協力条件は会社によって異なります。採択後や不採択の際の決まりは相談時に確認しましよう。

「事業計画書」と言われると身構えてしまいますが、SWOT分析や、広告費とその費用対効果をまとめるだけです。日ごろからすぐに自社の状況を説明できるように鍛えておきましょう

 

クラウドファンディング(CF)も近年増えている資金調達方法で、企業や個人の「やりたい」ことに対し、賛同してくれた人から資金を募る仕組みです。代表的なCFサービスに、READYFOR、Makuake、CAMPFIREなどがあります。

出資額に応じて商品や利用チケット等の「リターン」を設定し、プロジェクト完了時に出資者に還元することが一般的です。CFは応援費込みの予約購入に近い性質のものと考えると、理解しやすいでしょう。

そのため、CFといっても単純な「助けてください」ではなく、(1)魅力的なリターンとその「実現可能性」、(2)応援したくなる「ストーリー」。この2点が成功する上で不可欠です。

調達達成後も、収支報告や定期的な活動報告、さらに企画倒れになった場合の返金対応といった、最後まで責任感のある対応が必要です。

人の善意を基盤にした資金調達方法だからこそ、資金と期待を「預かっている」という気持ちを忘れないようにしましょう。

クラウドファンディングを活用する事例も増えた結果、よりシビアに「応援したい」と思わせる魅力や、ひたむきに努力する姿勢が求められるように。期待や信頼を裏切らないようにしましょう

POINT
願望を語るだけでは資金調達は成功しない
具体的な事業計画で「説得」しよう

※Web制作・運用バイブル 2022(2021年11月8日発売)掲載記事を転載