STP分析、ペルソナ設計でネット施策のターゲットを考える 事例詳細|つなweB

ネット施策では、自社の強みに好感を持つ顧客層に的を絞って、ホームぺージ制作やSNS運用を行うことが基本です。画面の向こうの顧客イメージを明確にするため、STP分析やペルソナ設計で人物像に迫ります。

 

ブログやSNS情報を発信するとき、「誰」が見るのか、相手のことをイメージできていますか? ネット施策では「ターゲット」、すなわち情報発信をする「相手」を設定することが重要です。

例えば、上図のように、宿泊先を探すと言っても、目的や誰と行くかによって、それぞれ着目する点やニーズは異なります。さらに、希望の価格帯や、旅館派かホテル派かといった違いもあるでしょう。おすすめの宿を訊かれた場合は、コミュニケーション上手な人ほど、こうした相手の希望にあわせて、条件にあう施設を紹介するのではないでしょうか? つまり、他者とコミュニケーションをする上で、相手のニーズを察知し、求めている情報を適切に出すことの重要性を私たちは無意識に知っているわけです。

一方でホームぺージやSNSでの情報発信は、店舗での接客とは異なり、相手と対面で会話をしながらニーズを引き出すということはできません。基本的には一方通行なので、逆にこちらから相手を「指定」して、その設定にあわせた情報発信を行います。この点がネット施策の特徴です。

おすすめの宿を訊かれたら、無意識に相手のライフスタイルや好み等を考えるのではないでしょうか? ネット施策上のコミュニケーションでも相手のニーズにあわせた情報発信が基本です

 

八方美人のサイトという言葉があります。ターゲットを絞り切れず、どういう層向けなのかよくわからないデザインだったり、情報がごちゃごちゃしていて見づらいといったことから、最初の数秒で閲覧者に閉じられて忘れられてしまうサイトのことを言います。

実は、企業のネット施策では、全方位的にしようとせず、自社の強みが一番活かせる相手に絞って発信するほうが閲覧者・事業者双方にとって都合がよかったりします。

その際に活用できるのが、32ページで実践したSWOT分析です。例えば宿泊業等では「変更できない事情」も中にはあります。上図の例のように、立地の都合でバリアフリー化が難しい事情がある場合、無理にバリアフリーを謳わない[撤退]も必要です。代わりに、女性客から評判のよい内装や客室の[強み]を活かせる、30代女性を主要なターゲットと設定してみます。そうすると、目指すべきサイトデザインや、打ち出すべき自社の長所、その魅せ方などが少しクリアになったのではないでしょうか? ターゲットを明確にすることで、施策の訴求効果が高まるのです。

ターゲットを決める時は、SWOT分析(→32ページ)で考えるとわかりやすい。その際、強みが活かせる顧客層のほか、[撤退]ゾーンに入る顧客層もある程度意識しておくと施策の見通しがよくなります

 

こで年齢や性別だけでなく、もう少し相手の属性を追加していきましょう。この段階では、STP分析という手法を使うことが主流ですが、本書ではわかりやすい要素を抜き出し上図にまとめました。

こうした顧客属性を決めることはホームぺージ制作以外のネット施策全般に大きなメリットがあります。

(1) ネット広告の出稿の際に便利

ネット広告は、性別や年齢(推定値)、地域などを指定して、配信対象を限定することができます。そのため、属性を明確にすることで、より反応・成約率がよい相手に絞って効率的に広告を出稿できます。

(2) SNSの投稿を考える時に便利

SNSでは投稿のタイミングが大事です。職業や家族構成等の属性を定めると、ライフスタイルやSNSを見る時間帯なども推測しやすくなるため、閲覧されそうな時間を狙って効果的に投稿することが可能になります。悩みがちな投稿内容も、趣味など相手のイメージが具体的になることで、アイデアもわきやすくコミュニケーションの質も上がります。

(3) インサイトの把握

インサイトとは、なぜ顧客が自社を選んだのか、選んだ「決め手」となった理由や動機のことを言います。生活スタイルや趣味等に加えて、最近の悩み等も設定することで、自社のアピールポイントがより明確になります。

具体的な属性は、実際の顧客の中でも「相性のよい」顧客をモデルにするとよいでしょう。満足度の高い顧客には、性格や趣味など、ある程度共通する要素があるはずです。それを抽出し、属性を仮定することで、ターゲットという「軸」に従って具体的施策を考えられるようになります。

年齢・性別など基本属性のほか、最近ではSNSに関連する属性も重要性を増している。架空のターゲットの生活リズムや習慣をイメージするのがポイントです

 

ぺルソナとは「自社の商品やサービスを購入してくれる架空の典型的な顧客像」です。意味がつかみにくいと思うので、先に61ページの実例を見てみてください。改めて「ペルソナ」とは、前ページで考えた自社商品のストライクゾーンとなる人の属性に、さらに名前や物語性を肉づけして仕上げた、「確かにいそう」な架空の人物の設定です。

ペルソナがなぜ必要かと言うと、人はいわゆる「デザイン」について、個々人の主観や好みで判断や意見をしがちです。しかし、ホームページはこの久保さんのハートを射抜くためにつくるわけですから、制作側も発注者側も、久保さんではない自分の「好み」で意見しては方向性が狂ってしまいます。そのため、関係者全員が、自分ではなくターゲットの気持ちになるために想像する人物。それが「久保さん」というペルソナです。

実際に、ペルソナシートを読んでから参考サイトを見てみると、言葉や視覚表現が久保さんを意識したものになっていることがわかるかと思います。

ペルソナは、ターゲット属性に物語性を肉づけして一人の架空の人物を想像するための設定書。このペルソナにむけてデザインやコンテンツをつくることで、ターゲットの共感を呼ぶデザインが生まれます
おこもり旅のススメ
https://www.okomori-tabi.com
制作:アルテバレーノ(株)

POINT
ネット施策では「ターゲット」理解が不可欠
生活感を想像できるリアルなペルソナをつくろう

※Web制作・運用バイブル 2022(2021年11月8日発売)掲載記事を転載