速くて強い改善サイクルを回すには? クッキーレス時代のビジネス成長は分析力+現場の制作力がカギ 事例詳細|つなweB
速くて強い改善サイクルを回すには? クッキーレス時代のビジネス成長は分析力+現場の制作力がカギ

アクセス解析を基にしたWebサイトの改善サイクル。その高速化に、制作者の役割がより重要になる可能性があります。クリエイティブをつくる人ならではの視点とは? サイト運営プラットフォーム「Ptengine」を提供する株式会社Ptmindの安藤高志さん、窪田知昭さんに聞きました。

 

教えてくれたのは

安藤 高志さん
株式会社Ptmind Ptmind Japan共同創業者/Country Manager 2010年、同社創業に参画。主に事業戦略と日本国内のビジネス展開を統括。
窪田 知昭さん
株式会社PtmindPtengine Senior Specialist Growth TeamにてPtengineの活用ノウハウを発信。マーケティング領域チームリーダー。

 

株式会社Ptmind(ピーティーマインド)
「データの価値を最大化する」というミッションのもと、 アジアを中心としてデジタルマーケティング支援ビジネスを展開。https://jp.ptmind.com/

 

クッキーレスで求められるロイヤルティ向上

弊社が提供する「Ptengine(ピーティーエンジン)」は、アクセス解析を視覚的に表示する「Ptengine Insight」、ノーコードでA/Bテストやパーソナライゼーションができる「Ptengine Experience」、およびそれらのデータベースからなるサイト運用プラットフォームです。マーケティング專門企業だけでなく、Web制作会社や事業会社のインハウス制作部門の方にも多くご利用いただいています。

ビジネスや消費行動のオンライン化が加速する中、Webサイトにはデータ主導による一層の成果獲得が求められ、事業者はますますユーザーを知る必要に迫られています。特にECやD2Cでは、施策の正確な評価が成長に直結します。そこに追い打ちをかけているのがいわゆる“クッキーレス問題”です。

2010年代、アドテクは大きく発展してきましたが、クッキーレスになれば外部の情報を使わず自分たちで得られる情報を使って効果的な施策を構築していかなくてはなりません。

いかに顧客体験を向上させ、ロイヤルカスタマーを増やすか。内部でのユーザーの行動をきちんと追い、検証できる仕組みが、アドテクから次の領域へ進むために必要とされてきています。

 

カスタマージャーニーやペルソナからの仮説を検証

アクセス解析といえば、すでに多くのサイトがGoogleアナリティクスなどをお使いでしょう。しかし、例えば特定のページについて離脱率が高いとわかった場合、修正すべき点はすぐに見つかるでしょうか。また、離脱率が低いのにCVへ至らない場合、どこがネックなのでしょうか。私たちは、その検証が顧客体験改善の鍵になると考えています。

Ptengine Insightでいうと、「スクロール到達率」を見ればファーストビューからどこまでスクロールして閲覧されたかがわかります。ファーストビューでの離脱が多ければ、広告やSNSなどユーザーが流入元の情報から得た期待とは乖離があったことが読み取れます。

「クリックヒートマップ」では、画面内にあるCTA(Call to Action=行動を促す)ボタンのクリック率が視覚的にわかります。スクロール到達率が高いのにCTAクリック率が低ければ、ボタンおよびボタン周辺のビジュアルやテキストに課題があると考えられます。

さらに、ページ内でどこが注目されているのか・いないのかが、「アテンションヒートマップ」で確認できます。これはCTA到達前の離脱を防ぐ目的で、コンテンツの文脈的つながりや内容の善し悪しを判断する材料になります。

しかし、単にこれらの解析結果だけを見ても、ユーザー理解は浅い領域にとどまります。より深く見るには、仮説を持ってデータを検証することが必要です。ここでサイト設計時のカスタマージャーニーやペルソナが活きてきます。

ペルソナと同じ経路で流入した人は仮説通りに行動しているでしょうか。異なる場合何が原因と考えられるでしょうか。またCVした人としなかった人で何が違ったのでしょうか。流入元の広告やキーワード、デバイス、訪問履歴など、セグメントを絞って比較することでポイントが浮き彫りになります。

デザイナー、コピーライターなど、直接手を動かした制作者自身がデータ分析に関わるケースは少ないかもしれません。しかし、クリエイティブの目的をもっとも理解している人だからこそ気付くこともあるはずです。

アイデアから即検証、チーム内のナレッジへ

さらに重要なのは、分析から新しい仮説を立て、検証することです。ファーストビューのコピーを変えたらどうか? ボタンの色を変えたらどうか? などのアイデアが出ても、それをページに反映し検証するには、エンジニアと連携した準備が必要で、部署間の理解を得る労力もかかります。こうしたことがネックになり、取り組みが長続きしないケースもよく聞かれます。

では、スピーディに施策を実行し検証するにはどうすればいいのでしょうか。私たちはその点を重視して「Ptengine Experience」を提供しています。事例をご紹介しましょう。

セグメント別の行動を比較して仮説を検証

ユーザーの行動が視覚的にわかる、スクロール到達率やヒートマップ。さらに、各種条件でセグメントを絞り、比較表示することで、仮説検証に役立つ

 

小さく始めて大きな成果へ UI/UXデザイナーの視点

株式会社イーブックイニシアティブジャパン様では、電子書籍販売サービス「ebookjapan(イーブックジャパン)」において、購買データには現れない顧客の嗜好分析や動線強化などの施策にPtengine Insight/Experienceを活用されています。

同社のUI/UXチームでは、売上に直結する検索体験の向上に着目しました。いい本に巡り合う確率が高まれば売上が上がる、というストーリーは確かに筋が通っていますが、その段階では費用対効果が見えず、また実装するにはエンジニアの力が必要で、部署間の協力を得るのに時間がかかってしまいます。

そこで、UI/UXチームはPtengineを使って検索体験の現状を分析し、エンジニアの手を借りずに改善策を実行・検証しました。

まず検索結果ページを分析すると、スクロール到達率はほぼファーストビューしか見られておらず、検索を補助するタグや並べ替えボタンがほとんど使われていないことがわかりました。これに対し、タグや並べ替えボタンをポップアップ表示させる、検索結果には出ないカテゴリトップや特集ページなどをレコメンドするなど、多数のアイデアを出し、それぞれ効果を検証しました。Ptengine Experienceを使うことで、クリエイティブの実装から検証までをチーム内で手早く行うことができたのです。

結果、ポップアップで表示させたボタンやレコメンドは一部でクリック率50%に達し、施策によっては売上が20%もアップしました。これをエビデンスに、組織全体で大きな改修を検討する段階に入ることができました。

UI/UXデザイナーの方々は、ユーザーに近くインサイトを得やすい立ち位置にいて、なおかつ施策を実行できるスキルをお持ちです。ここにデータ分析力が加われば、改善サイクルの大きな戦力になるはずです。少人数でも、多数のアイデアを早いサイクルで検証することで、大きなインパクトを生む可能性があるのです。

UI/UXチームによる検証~改善提案

検索結果ページの解析からユーザー行動の仮説立て、改善策を立案。テスト実装から計測結果の検証までを少人数のチームで行った。こうした蓄積がその後のプロダクト改善の参考になった

 

現場のインサイトを経営の意思決定に活かす

もう一つ、ECサイトでの活用例をご紹介しましょう。あるファッション系の店舗で、商品購入後のユーザーに対して発売前の商品画像を2つ提示し、どちらが好みか選択してもらいました。10日間の期間中、購入者の約70%がこれに回答しました。

この結果を元にバイヤーが売れ筋を見立て、仕入れる品を選択。在庫リスクの低減につながりました。販売開始後はその商品を選択したユーザーの再訪問時にレコメンドも表示させました。

オペレーションの現場から価値あるインサイトを抽出し、質の高い意思決定に役立てることができた事例です。同じデータが、ユーザーの嗜好に合わせたパーソナライズにも活用されました。

 

クッキーレス時代はケーススタディの積み上げを

クッキー規制で外部の情報を活用できなくなる時代を前に、こうしたサイト内部の行動データや顧客の嗜好データへのニーズが、いま非常に高まっています。

Webサイトのビジネス成果というとCVRが注目されがちですが、私たちはビジネス全体の成長を支援したいと考えています。さまざまな仮説を持って能動的に検証を行うことで、個々の結果がケーススタディとして積み上げられ、チーム全体のナレッジとして価値を持つことになります。

これまでアクセス解析やマーケティングツールとは縁がなかった職種でも、データからインサイトを得て、ビジネスに活せる機会があるでしょう。特に制作者の方は、目的に対する仮説をを形にすることがお仕事ですから、アクセス解析が具体的な改善点のフィードバックになるはずです。

めまぐるしくトレンドが移り変わる中、サイト上のコミュニケーションも継続的に変え続けなくてはなりません。制作者の方にはクリエイティブの制作に留まらず、仮説とクリエイティブをつなぐ交差点にいる立場として、データ分析を活用していただきたいと思います。

オペレーション現場のインサイトを経営判断に活かす

ECサイトのオペレーションの中で、ツールを使ってアンケート形式の調査を実施。購入後のユーザーが対象なので価値の高い情報を集められる

 

笠井美史乃