基本にして最強のスキル・Webディレクターのコミュニケーション力とは?(4) 事例詳細|つなweB
基本にして最強のスキル・Webディレクターのコミュニケーション力とは?(4)

【6_対人関係】怒る人・落ち込む人に感情をあわせない

→同じ感情で返せばより深みにはまってしまうから

 

感情でパフォーマンスを落とさないために

社内外問わず、怒る・落ち込むといった人の感情がプロジェクトの進行に影響を及ぼす状況は避けたいものです。こうした人には、相手の感情の原因を考えて対応します。

例えば、こちらに明らかな非がないのにクライアントが怒っている場合、単に感情的になっているか、不安から責任転嫁しようとしている場合がよくあります。こちらも感情で返せば潰し合いになりますから、一度全部聞くか、持ち帰るかなど、対処を冷静に見極めます。最終的には適切に責任範囲を切り分け、道理で返すことが企業間では望ましいやり方です。

また、自責の念が強すぎたり、ことを必要以上に重く受け止めすぎて、社内のメンバーが落ち込んでしまっている場合、ディレクター自身は「それほど重く受け止めていない」態度で接することが大切です。

「ヤバいです…」と言う相手に同調して焦った態度を見せれば、相手はますます深みにはまります。本心はどうであれ「そうだよね、でもなんとかするよ」とポジティブに返すことを意識しましょう。

自責が強すぎる人には、「責任を取るのはディレクターの仕事。あなたは自分の仕事で挽回して」と繰り返し伝え、タスクに心を向けてもらいます。感情によってクリエイターのパフォーマンスが低下しないことが第一です。相手の気持ちのつくり方を考えましょう。

 

経営者・上司はコマとして動く

クライアントとの交渉、謝罪などの場面では、担当ディレクターだけでなく上司の同行が必要な場合があります。しかし、部下から上司に「一緒に頭を下げてください」とは言い出しにくいもの。役職者・経営者でもある方は、折に触れて必要ならコマとして動く意思があることを伝え、部下が頼める関係をつくりましょう。

 

 

【7_プロジェクト終了】振り返りは「全員で」「すぐに」

→人は自分の経験からしか学べず、時間が経つと優先度が下がるから

 

振り返りもプロジェクトの一部

プロジェクトが終わる度にナレッジを蓄積できれば、会社の資産になります。しかし、前回プロジェクトのKPT(振り返りメソッド)を次の仕事で読み返すかというと、そうでもありません。人間、本当に身につくのは自分の経験から学んだことだけで、記録して人に伝えられるのはそのうちごくわずかです。

しかし、振り返りは重要です。私はナレッジ共有というより、参加者自身のためにKPTが必要だと考えています。

まず、経験を言語化することで出来事の認識が具体的になり、同時に文字として残すことができます。自分の経験と向き合いきちんと消化することで、次に活かせる自分のナレッジとして残せるのです。

さらに、これをメンバー全員参加のミーティングで共有します。同じ出来事を他の人がどんな認識で捉えていたのか、自分はどう考えたのか、その温度差を知ることで次回の自分の行動を補正できるからです。クライアントにも参加してもらえれば理想的です。

振り返りミーティングは、とかく参加の優先度を下げられがちです。全員に出席してもらうには、プロジェクトのイベントとしてあらかじめスケジュールに含めておき、納品完了の週内などなるべく早くに実施するのがコツです。KPTを書く時間も、全員のタスクとして押さえておくのがよいでしょう。

 

ねぎらいは飲み会でなくても

“飲みニケーション”が社会状況的にも難しい現在ですが、ねぎらいが不要なわけではありません。終わった直後にメンバーへ缶コーヒーを手渡し「おつかれ」と声を掛けて乾杯してもよいでしょう。宴席的な場にこだわらずとも、タイミングと気持ちの演出で達成感を形づくることはできるのです。

 

 

笠井美史乃/Illustration : 高橋未来