基本にして最強のスキル・Webディレクターのコミュニケーション力とは?(3) 事例詳細|つなweB
基本にして最強のスキル・Webディレクターのコミュニケーション力とは?(3)

【4_オンライン】齟齬なく伝わる文章術が武器

→意図の確認でやり取りが増えると余計なコストがかかるから

 

後で第三者が見ても意図が伝わる文章に

簡潔に、過不足なく、齟齬なく伝わる文章は、オンラインでは特に必須のスキルです。意図が曖昧で確認に時間がかかったり、違う解釈のものが出来上がったりすると、コストにもスケジュールにも影響があるからです。よくあるのは、何の話をしているのか本人だけがわかっている、目的語がない、行間を読まないと伝わらない、といった文章です。

私は、社内で適切な書き方を指導するのはもちろん、新規クライアントに対しては私が主催する「誰がどう見てもそうとしか受け取れない文書術セミナー」を実施し、ムダのないやり取りを目指しています。

また、ツールの集約も重要です。例えば、チャットは「@◯◯様 下記URLをご確認ください」など伝達に徹し、具体的な内容はプロジェクト管理ツール上に書く、といった形です。こうすると後で検索しやすく、第三者が確認可能な記録になります。その場だけで通じる単語レベルの会話は、プロジェクトのチャンネル上では避けましょう。

一方で、オンラインではエモーショナルな部分が伝わりにくいのが課題です。そこで、ビデオ会議では相手の顔や資料の画面をカメラの近くに配置し、目線が合っているように見せる、外付けマイクを使い声の乗りを良くするなど、通話環境をなるべくリアルに近付けられるよう工夫しています。

 

文章術は学んで身につける

「誰がどう見てもそうとしか受け取れない文書術」セミナーでは、文章で情報を伝える際、認識の齟齬が起きる理由とその対策を伝えています。2020年はテレワークの影響で課題が顕在化したケースも多かったようです。表現力とは違う、必要なことを的確に伝える文章は、意識して学ぶべきスキルだと考えています。

公開版セミナースライド(https://speakerdeck.com/namura/)を元に作成。セミナーは2021年も開催予定

 

【5_トラブル対応】最後まで冷静でいること

→ハブ役がパニックになると全体が動けなくなるから

 

人に相談するためにも冷静さが必要

トラブルなく進むプロジェクトは、ほぼありません。大なり小なり何かは起きると思っておいた方がよいでしょう。そしていざ起きた時、ディレクターに求められるのは、最後までもっとも冷静でいる心構えです。

多くの場合、1つのプロジェクトにディレクターは1人。社内外関係者のハブであるそのディレクターがパニックになってしまったら、全員がどう動いていいかわからず、プロジェクトが機能不全に陥ってしまいます。

ディレクターの役割は、トラブルが起きても納期を守って成果物を形にすること。つまりプロジェクトを終わらせることです。しかし、忙しさに加え、職責と判断に挟まれてプレッシャーを抱え続ければ、大方の人は心が折れてしまうでしょう。

圧倒的なスキルと知識で何でも1人で解決するスーパーディレクターになれますか? そうでなければ、鍵になるのは上司やチームメンバーの存在です。自ら現状を伝え、力になってもらわなくてはなりません。

自分の失敗をさらして上司からの評価が下がることを気にしたり、メンバーに迷惑をかけて嫌がられることを気にするよりも、ディレクターは「終わらせる」役割を優先しなくてはなりません。相談できないままでは、本当に1人になってしまいます。

人に相談するという選択肢を見失わないためにも、まず自分が冷静でいることを心がけましょう。

 

相手の想定より「少し上」の対応を

個人的に、トラブル時は想定より「少し上」の対応を心がけています。クライアントへの謝罪なら、メールで一報し、電話で温度感を探り、「上司の方へ状況を説明したいので今から伺います」と踏み込みます。そこまでは不要だと言われることもありますが、まず態度を示すことが後の信頼につながると考えています。

 

 

笠井美史乃/Illustration : 高橋未来