ファシリテーションの意識が発注側と受注側の関係性を深める「共創コミュニケーション」で追求したUX 事例詳細|つなweB
ファシリテーションの意識が発注側と受注側の関係性を深める「共創コミュニケーション」で追求したUX
マネーフォワード税理士・社労士向けサイト :https://cpta.biz.moneyforward.com/
福岡 慎也
株式会社マネーフォワード マネーフォワードビジネスカンパニー事業推進本部 士業マーケティング部 部長
https://corp.moneyforward.com/
和田 嘉弘
インテリジェントネット株式会社 代表取締役/プロデューサー
https://www.ini.co.jp/
御船 晋伍
インテリジェントネット株式会社 UX/ コンサルティングチーム リーダー
 
古澤 優衣
インテリジェントネット株式会社 UX/コンサルティングチーム

 

事業指針にシンパシー「価値観があう」という大前提

マーケティング力と開発力でインターネットビジネスの成功をサポートするというモットーのもと事業を展開しているインテリジェントネット株式会社。既に付きあいのあるクライアントから「価値観が近い」と紹介されたのが株式会社マネーフォワードだった。

マネーフォワードは「お金のプラットフォーム」を構築し、個人・法人のお金にまつわる課題を解決する事業を行なっている。同社が行なうコンペに、インテリジェントネットも参加することになった。

「本部内には私も含めて営業出身のメンバーが多く、サイト作成に関しての知見がありませんでした。そのため、お互いに議論を交わしながら、いいものをつくり上げていける会社と仕事をしたいと思っていました」(マネーフォワード・福岡慎也さん)

「コンペでは、マネーフォワードさんの価値観や事業指針にあわせて、他社との差別化要素も考えたうえでペルソナを設計し、サイトのコンセプトを構築した提案を行ないました。また、マネーフォワードさんの思想や事業指針に会社としてのシンパシーを感じたため、長くお付きあいしたいという気持ちもお伝えしました」(インテリジェントネット・御船晋伍さん)

 

プロジェクトの全体像コンサル・設計フェーズでの土台固め

コンペでのメッセージが強く響いたという福岡さんに、インテリジェントネットを選んだ理由をうかがった。

「事業推進本部は当初は営業組織としてできた本部なので、人の思いを動かすということを重視しています。率直な気持ちを伝えていただいたことで一気に距離が縮まりました。これも大きかったと思います。インテリジェントネットさんを選んだ主な理由は3つ。コミュニケーション力の高さ、サイト作成がゴールではなくサイトを使ったビジネスの成功がゴールであるという意識、カルチャーがフィットしているということです」

特にフロントエンドとバックエンドのはざまを埋める存在を目指すという点。尖った技術力を誇るのではなく、サービス重視の安定した技術で長期的にクライアントと付きあうという価値観がマネーフォワードと近いと感じ、一緒に仕事をしたいと思ったという。

2020年2月から顔合わせやヒアリング、準備をスタートし、4月にコンペを開催。

「税理士・社労士の公認メンバー制度の会員獲得のためのサイトリニューアル」のプロジェクトは、4月半ばから約7カ月後のローンチを目指してスタートした(全体スケジュールは下図を参照)。

「戦略フェーズ、設計フェーズは、会議の熱量が高くなってしまい、当初策定したスケジュールよりも延びてしまいました。しかし、サイト作成の要ともいえる段階であり、土台をしっかりと固めることが第一と考えました。そこで以降のフェーズで時間的な調整を図ることにしました」(インテリジェントネット・古澤優衣さん)

全体のタスク像とこまめなスケジュール管理を徹底し、常にWBS(Work Breakdown Structure:作業分解構成図)に落とし込んで怠りなく調整を続けたという。

 

共創を目指すためのよりよい議論の環境づくり

マネーフォワードにとっての重要なポイントである「一緒に考え、つくる」という取り組みを実現するために古澤さんが掲げたキーワードは「共創コミュニケーション」。それをもとにコミュニケーション設計を行なった。

「各フェーズにあわせて、最適なツールを活用しました。通常の連絡はBacklogやメールで行います。戦略フェーズや設計フェーズでは、スピード感が求められるためChatworkも活用。当初の打ち合わせやコンペは対面ですが、コロナ禍ということもあり、プロジェクト開始以降はオンライン会議が主流となりました」(古澤さん)

今回は、特にドキュメントの共同作成を実施。Googleスプレッドシートを活用して、両社が常に最新のドキュメントを編集・閲覧できるように配慮した。

「定例会の前に、会議で話し合うべき部分を洗い出して、他の部分は会議前にテキストベースでシェアしておきます。それによって、重要課題について時間をかけてじっくりと議論できる環境を整えました」(古澤さん)

福岡さんは、オンライン会議をこう振り返る。

「インテリジェントネットさんが当社の事業のことをよく理解してくれていたので、前提条件が揃った段階で議論することができました。つまり共通認識の言語化を徹底したため、あと戻りすることがないのです。だからこそ対等な議論が実現できたと思っています」

御船さんは、特に戦略フェーズでファシリテーションを強く意識したと語る。

「マネーフォワードさんからは、サービス提供側からのご意見をいただき、当社からはユーザー観点のアプローチを提案。双方の観点から協議して、プロジェクトの目的とサイトの立ち位置を導き出しました」

 

議論を重ねたからこその気づき仕様変更で導いた成果

丁寧なコミュニケーションを重ねたことで、インテリジェントネットはある提案を行なうことになる。それはサイトの立て付け自体をアップデートするということ。当初の仕様は問い合わせや資料請求をメインとする「士業の公認メンバー獲得のサイト」だったが、ユーザーにあらゆるサービスを提供するサイトが望ましいと考え、「士業向けのポータルサイト」への変更を提案した。

「自社の機能軸でサイトの内容を考えていたので、ポータルサイトにするという発想はありませんでした。インテリジェントネットさんは、常にマネーフォワードを主語にして、私たちのお客様にとってどんなサービスが必要かを考えてくれていたので、そこに行き着いたのだと思います」(福岡さん)

今回のプロジェクトを通して、受注側、発注側の良好なコミュニケーションについてどのような気づきがあったのかを聞いてみた。

「対等な関係性だと思います。当社が掲げるカルチャーであるリスペクト(感謝と尊敬を忘れずに誠実であり続ける)を実践することで、オープンでフラットな関係性を築くことが一番重要だと思いました」(福岡さん)

「大切なのはUXを貫くこと。マネーフォワードさんに寄り添うというのは、マネーフォワードさんのお客様に寄り添うということです。制作側は、UIやカスタマージャーニーではお客様観点ですが、ビジネス判断の場面でそれが揺らぐこともあります。UX8割ビジネス2割の観点が、結果的にビジネスの成功につながると思います」(インテリジェントネット・和田嘉弘さん)

リニューアルしたポータルサイトは、Web経由の相談件数が2.2倍に増加し、成約数も改善。両社のUXに対するこだわりが、数字的にも証明された結果となった。