課題感の共有がCMS導入をスムーズに進めるコツ 原材料メーカーというイメージ脱却に向けた新たな挑戦 事例詳細|つなweB
課題感の共有がCMS導入をスムーズに進めるコツ 原材料メーカーというイメージ脱却に向けた新たな挑戦
おいしい大麦研究所:https://www.hakubaku.co.jp/omugi-lab/
輿石修
株式会社はくばく 取締役市場戦略本部長
https://www.hakubaku.co.jp/
波多広美
株式会社はくばく 市場戦略本部 商品戦略部 広報課 課長

 

大麦の魅力をわかりやすく伝えブランド力向上につなげるために

穀物製品の製造・販売を手がけている株式会社はくばく。大麦の市場シェアでは業界トップを誇る同社だが、ブランディングに関して課題を抱えていたと、取締役市場戦略本部長の輿石修さんは当時を振り返る。

「当社は原材料メーカーに近いスタンスの会社だったため、生活者の視点に立って商品を開発するという意識が、社内にあまり浸透していませんでした。しかし、会社としてさらに成長していくためには、商品を売る一過的な施策ではなく、はくばくの商品を長期的にユーザーに選んでもらうためのブランディング戦略が求められていました」(輿石さん)

また、昨今では健康食品としても注目を集めている大麦。その効果や効能に関する情報を社内で多く持ち合わせていたものの、生活者に対してわかりやすく提供できていないという課題もあったという。

「大麦の魅力を信頼できる情報として発信したいという想いも強くありました。それが最終的には大麦摂取の習慣化を促し、ブランド力向上にもつながると考えていたからです」(輿石さん)

そういった課題を解決するために立ち上げられたのが、CMSが導入された「おいしい大麦研究所」だ。

 

CMSを導入したサイト立ち上げは「手段」であり「目的」にあらず

輿石さんが最初から最後までこだわったのは、最終的な目的はあくまでも企業のブランディングであるということだ。

「私が以前参加したワークショップで、『メディアシンキング』という考え方を知りました。情報・商品の送り手と受け手の中間の視点を持とうという思考原則のことです。生活者視点を持つことはもちろん重要ですが、事業者側として何を大切にしたいのかという視点も忘れてはならないという話を聞き、これだ!と思ったんです。そこで、そのワークショップを主催していた株式会社コンセントさんにブランディングについて相談させていただきました」(輿石さん)

まずコンセントから提案されたのは、ブランディング施策のゴールを決める必要があるということだった。そこで、「大麦の健康効果を一般普及させること」と、「“大麦といえば、はくばく”というイメージを想起させること」をゴールに設定。そのゴールを目指すプロジェクトがスタートした。

「そもそも、“はくばくは原材料メーカー”という社内の意識改革を図る必要がありました。その第一歩は生活者視点を理解すること。当社の若手・中堅社員向けに、一般生活者をも巻き込んだワークショップをコンセントさんに開催していただきました」(輿石さん)

その後、ワークショップで理解を深めた生活者視点をもとに、ブランディングのターゲットとコンセプトを定義したという。

「そのターゲットの方にどんなチャネルでコンセプトを体験していただくのがいいのかを話し合う中で、Webオウンドメディアを制作することになりました」(輿石さん)

そして、将来にわたって継続的に大麦の魅力を発信し続けることができるよう、CMSを導入したサイトを構築することになったのだ。

 

課題感の共有に時間をかけることがCMS導入をスムーズに進める近道

新規のWebサイトを立ち上げ、さらには今まで使っていなかったCMSという新たなシステムを導入して運用するとなると、さまざまな課題に直面しそうなものだが、ほとんど苦労はなかったと二人は口をそろえた。

その一番の理由は、生活者視点について学ぶワークショップも含め、課題感の共有に時間をかけ、チームメンバー全員が当事者意識を持って臨めたからではないかと輿石さんは話す。

「CMSを導入して新しいサイトを立ち上げることが目的のプロジェクトとしてスタートしていたら、スムーズに進んでいなかったのではないかと思っています。はくばくが抱えている課題にはこういうものがあり、その課題を解決するための一つの手段として、CMSを使って大麦の魅力を発信していく必要があるということを、メンバー全員が理解できていたのは大きかったと思います」(輿石さん)

もう一つ、チーム内での役割分担を明確にしたこともスムーズに進んだポイントだったのではないかと話してくれた。

「決裁が必要な打ち合わせには私もすべて参加し、その場でイエスかノーかの判断をしていました。一方で、コンテンツの中身については、現場の人間の方が詳しいですから、私はほとんどノータッチでした。サイトのデザインはコンセントさんにすべてお任せしていましたね」(輿石さん)

実際にコンテンツ制作に携わった波多広美さんは、こう付け加えた。

「ターゲット定義に時間をかけ、ペルソナを細かく設定したことも大きく影響していると思います。それが明確に決まっていて、さらにメンバー全員が把握できていたからこそ、デザインはすべてコンセントさんにお任せするという信頼を置くことができました」(波多さん)

 

CMSを活用し順調にサイトを運営中 今後もより良いサイトを目指す

「おいしい大麦研究所」の立ち上げにより、社内に点在していた大麦の情報をまとめ、発信することが可能に。また、CMSを導入したことで、今は自社内だけで問題なくコンテンツを更新できているという。

「現在、コアのメンバーは4人で回していますが、コンテンツの内容に関しては、研究開発部などにも協力を仰いでいます。でも、皆が大麦の魅力を伝えたいという意識を持ち、仕事を自分事化して捉えているため、積極的に参加してくれています。CMSの使い方含め、わからないことがあればフォローし合える環境です」(波多さん)

サイトへのアクセス数は順調に伸びており、「大麦といえば、はくばく」の想起率、そしてブランド力を向上させたいという当初の課題は解決できたと輿石さん。波多さんは、予期せぬ収穫もあったと話してくれた。

「社内では当たり前のことが、生活者にとっては有益な情報の可能性があるということを知れたのは大きな収穫でした。一番顕著だったのは、大麦のおいしい炊き方に関するコンテンツです。社内では誰もが知っている情報ですが、アクセスが非常に多く、生活者の方はここに一番悩んでいたのかと驚きました。生活者目線で考えることの大切さを改めて実感しました」(波多さん)

最後に今後の展望について、輿石さんは次のように語った。

「今は大麦の魅力を伝えているだけにとどまっており、まだメーカー目線のサイトだと思っています。将来的には、もっとお客様に大麦を食べていただき、その魅力をユーザー自らが伝えたくなるようなところまで持っていきたいです。違う切り口を入れるのか、大きな方向転換をするのか。まだ検討中ですが、より良いサイトを目指してリニューアルしていきたいですね」(輿石さん)