制作会社との付き合い方:Webサーバの引越って、どんな作業が伴うの? 事例詳細|つなweB
制作会社との付き合い方:Webサーバの引越って、どんな作業が伴うの?

例えば、これまで使っていたレンタルサーバから別のレンタルサーバに移したい。そんなとき、作業費の見積もりが予想よりも高いと感じた人はいないでしょうか。Webサイトの内容変更は行わないのに、どうしてそこまでの費用がかかるのか。引越しにかかる作業の内訳をご説明しましょう。

■ 意外と多いサーバ移管のステップ

自分が使っているパソコンの感覚でいえば、ハードディスクに入っているデータを、そっくりそのまま別のハードディスクに移し替えるようなイメージを持つかもしれません。しかし実際には、それほど簡単なことではありません。単にデータを移し替えただけでは、Webサイトが正しく稼働してくれないのです。

では、サーバの移管作業というのは、具体的にどのような作業を行うのでしょうか。まずは箇条書きで大まかな流れをまとめてみましょう。

1. 移管先のサーバ会社・プランを決定
2. 移行スケジュールを組み立て
3. 新サーバを契約
4. 旧サーバからサイトデータをバックアップ
5. 新サーバでWordPressなどのCMS環境を整える
6. CMSのデータベースを移行する
7. サイトデータを新サーバにアップロード
8.Webサイトが問題なく表示されるかどうかをチェック

ここまでが、Webサイトを移し替えるためのざっくりとした流れですが、これではまだ、まだサーバの切り替えは完了しません。サーバの引っ越しでは、ほとんどの場合、Webサイト(Webサーバ)の引っ越しのほか、メール(メールサーバ)の引っ越しも行う必要があります。

■ メールサーバの移管も忘れずに

通常のレンタルサーバでは、Webサイトの運用環境とメールの運用環境をセットで提供しています。企業によっては、Webサーバとメールサーバを別のサーバで運用しているケースや、そもそもメールサーバを一切使っていないケースなどもありますが、Webサーバもメールサーバも同じレンタルサービスを使っていることが多いのではないでしょうか。Webサーバの引っ越しだけに気を取られていると、引っ越し後にメールが届かなくなるというトラブルに見舞われることになります。

メールサーバの移管作業の流れは以下の通りです。Webサーバの移管作業と並行して、あるいはWebサーバの移管作業が一通り完了した後に作業を行います。

10. 旧サーバに登録されているメールアカウントをリストアップ
11. 新サーバに同じアカウントを登録(インポートが可能な場合はインポート)
12. 各ユーザPCのメール設定変更について案内
13. 各ユーザの変更が問題なく行われているか確認

■ すべての準備ができたらDNSを切り替え

ここまでの作業を行い、Webサーバとメールサーバの準備が整ったら、いよいよサーバの切り替えを行います。

14. DNSの切り替え
15. Webサイトに問題なくアクセスできるかどうかを確認
16. メールが問題なく送受信できているかどうかを確認
17. 事前に立てたスケジュールに沿って旧サーバを解約

ここまでで、ようやくサーバの移管が完了となります。ざっと書いただけですが、意外と作業項目が多いというのがおわかりいただけると思います。

■ 見えにくいコストもいっぱい

サーバの移行作業では、作業の工数や所要時間がはっきりしない作業がたくさんあります。例えば、「1. 移管先のサーバ会社・プランを決定」では、依頼主にに変わってどのサーバ会社が良いのか、どのプランがオススメなのかを選定し、依頼主に提案書類を作成する必要があります。また、「2. 移行スケジュールを組み立て」の段階では、Webサイトの各種メンテナンスやページ追加などの作業と時期が被らないように調整し、依頼主に説明文書を作成します。

意外と面倒なのが、メールサーバの移行です。登録しているメールアカウント数によって作業の量が変わってきますが、一番大変なのが依頼主に説明用文書を作成し、各自のPCでメール設定を完了してもらうことです。PCの操作に対する理解度も人によってバラバラで、使っているメールソフトもまちまち。メールをPOPで運用しているのか、IMAPで運用しているのかによって手順も変わってきます。こうしたサポート業務にもけっこうな時間が発生する可能性があり、それらが移行作業のコストに含まれていきます。

■ 一筋縄でいかないケースも

また、Webサイトによっては、かなり手を入れないとサーバの移管ができないケースがあります。メールフォームをはじめWebサイト内に入れているプログラムが、移行先のサーバで動作しない可能性があるのです。

特に旧サーバの仕様がかなり古いものだった場合、プログラムの一部を書き直したり、場合によってはイチから作り直さなければ、新しい環境で動作しないことがあります。プログラムの変更作業が発生すれば、当然それもコストに跳ね返ってきます。複雑なシステムを組んでいる場合、プログラム改修のコストだけでも膨大なものになってしまうでしょう。

引っ越し以前から関わっていたWebサイトであれば、制作会社側もどんな懸念点があるかを想定できるのですが、初めて手を付けるWebサイトだと、調査してみないとわからない部分があります。移管の見積もりをつくる際は、そうした調査費用も含めて算出するケースもありますし、さらに調査後に追加費用が発生する可能性もあります。サーバの移管は意外と工数がかかり、それがコストに反映されるということをあらかじめ理解しておきましょう。

Text:Web Designing編集部 Illustration:高橋美紀